公益財団法人かながわ健康財団
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たばこと健康(講演要旨)
医師(禁煙、分煙活動を推進する神奈川会議会会員)
○ タバコの歴史と現状
・ タバコは中南米原産のナス科タバコ属の植物です。15世紀の大航海時代にヨーロッパに広がり、日本には16世紀前半に入ってきました。

・ 19世紀後半から紙巻タバコの大量生産が始まり、喫煙人口が急増しました。

・ 現在、世界で12億人、日本では2,600万人の喫煙者がいると推計されています。そのため、毎年、世界では500万人、日本では20万人がタバコ関連疾患で死亡していると推計されています。毎年、神奈川県民900万人の半数以上に当たる人がタバコ関連疾患で亡くなっていることになります。

・ 日本の喫煙人口は約2,600万人、その内男性は2,000万人弱、女性は約600万人であり、男性の喫煙者は減少してきていますが、女性の喫煙者は横ばい状況です。

・ タバコの煙には一酸化炭素、ニコチン、タールなど、4000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち200種類以上が有害物質、60種類以上が発がん物質又は発がん促進物質とされています。また、タバコの先から出る煙(副流煙)は、燃焼温度が低いため、主流煙よりも多くの有害物質が含まれています。空気清浄機では、有害物質のうち、粒子状物質は除去できますが、ガス状物質は除去できません。そのため、喫煙者だけでなく、周囲の人の健康にも悪影響を及ぼします。

・ 一酸化炭素は、酸素よりも200倍も赤血球に結び付きやすいので、低酸素状態を引き起こします。
・ ニコチンは脳に働きかけ、依存症を引き起こします。

・ 低ニコチンタバコは、喫煙者が満足を得ようとして深く吸ったり本数を多く吸ったりしてしまうため、多くの一酸化炭素や有害物質を吸う結果になってしまいます。また、低ニコチン、低タールタバコには多くの添加物が含まれており、有害物質をより多く吸うことになってしまうという研究結果もあります。
○ タバコの依存性
・ タバコは、誰もが健康に悪いことは知っていますが、「周囲の人が吸っているから」となんとなく吸い始め、いつの間にかニコチン依存症になり、やめられなくなってしまいます。

・ タバコを吸うと5〜6秒でニコチンが脳に達します。ニコチンは、脳内のニコチン受容体と結び付き、ドーパミンを分泌させ、離脱症状を軽減します。タバコを吸い始めることによって、イライラするなどの離脱症状が起きてきます。これを身体的依存と言います。また、離脱症状の緩和を気分転換、ストレス軽減などに錯覚することを心理的依存と言います。
○ 喫煙による健康への影響
・ タバコは、がん、循環器疾患、呼吸器疾患など、重篤な疾患の強力な危険因子です。

・ 喫煙は、肺がんをはじめ、ほぼ全ての臓器のがんの原因となります。男性では、喫煙により喉頭がんで死亡する確率が32倍、肺がんでは10倍高くなるという研究があります。

・ また、心筋梗塞、脳卒中、腹部大動脈瘤などの循環器疾患や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、喘息など、呼吸器疾患の原因ともなります。

・ 女性の場合、低体重児出生や不妊の原因となります。また、乳幼児突然死症候群の危険性を高めます。

・ その他、眼科疾患や糖尿病、骨粗しょう症など、ほとんどの病気に影響することが明らかになっています。

・ 喫煙による疾病の特徴は、心筋梗塞や動脈硬化、COPDなど多くの喫煙関連疾患が合併することです。

・ 臨床の現場では、軽度の高血圧や高コレステロール、高血糖などは比較的コントロールが容易ですが、喫煙によりリスクが相乗的に増加しますので、喫煙を継続していると治療をしてもコントロール不能なことが多くあります。

・ 喫煙者は、非喫煙者に比べ10年寿命が短くなるという研究もあります。

・ 医学的には、喫煙とは、ニコチン依存症とタバコ関連疾患により形成される喫煙病という全身性疾患と定義されています。喫煙者は、積極的な治療を必要とする患者です。そのため、2006年からは治療に保険が適用されるようになりました。
○ 受動喫煙による健康への影響
・ 他人のタバコの煙を吸わされることを受動喫煙と言いますが、受動喫煙により、喫煙とほぼ同種の健康影響があることが明らかになっています。

・ 肺がんをはじめとする多くのがん、COPD、心疾患、子供の喘息や中耳炎、乳幼児突然死症候群などの原因となることが明らかになっています。

・ 喫煙者は、家族や職場の同僚をこれらの受動喫煙の害にさらすことになります。
○ 禁煙の効果
・ 禁煙するのはできるだけ早い方が良いですが、決して遅すぎるということはありません。

・ 禁煙して数時間で血液中の酸素濃度が正常になり、数日で呼吸が楽になり、数か月でせき、息切れが改善します。1年で心臓病の危険性が喫煙者の半分に減り、肺がんの危険性が5年で半分に、10年で非喫煙者と同程度となります。

・ 既に心筋梗塞などを発症してしまった人でも、禁煙することにより、再発リスクを下げることができます。また、COPDを発症している人でも、禁煙することにより、その進行を遅らせることができます。

・ 禁煙にはメリットはあってもデメリットはありません。是非禁煙に取り組みましょう。