がん対策

第20回がん克服シンポジウム 講演内容

第20回 記念大会 がん克服シンポジウム
正しい知識でウェルビーイングな人生を
現代の日本では、2人に1人ががんに罹患すると言われており、がんに関する情報があふれています。
今回は、予防医学の分野でリーダーシップを発揮されている津金昌一郎先生と俳優の秋野暢子さんに、がんとはどういう病気なのか、どうすれば予防できるのか、そしてがんになった場合の向き合い方についてお話いただきました。

第1部:津金先生講演「がん予防最前線」
(要約)
正しい知識を持ってウェルビーイングな人生を送るためには、がんの予防と早期発見が重要です。たくさんの情報がある中で、科学的根拠のある本当に病気の予防につながることを実践していただきたいと思います。健康的な生活習慣の実践や定期的な検診により、がんだけでなく他の病気の予防にもつながります。
がんは加齢現象の一つであり、年齢を重ねるほどがんになりやすくなります。壮年期では男性は3人に2人、女性は2人に1人がんと診断されるため、社会で活躍できる年代ががんで亡くならないような対策が必要です。
若い世代のがん死亡数は減少しているものの、がんは依然として重要な健康課題です。予防策として、禁煙、節酒、バランスの取れた食事、適度な運動、適正体重の維持、感染症の予防が挙げられます。これらを実践することで、がんにかかるリスクを約4割ほど下げることが可能です。
タバコはあらゆるがんの原因であり、受動喫煙も危険です。神奈川県では全国に先駆けて世界レベルの喫煙対策が行われましたが、日本全体での浸透には時間を要しました。
また、飲酒は肝がんや大腸がんの原因となり得るため、適量の飲酒が推奨されます。体型については、痩せすぎも太りすぎも健康に良くありません。食事面では、塩分の過剰摂取や熱いものの摂取が胃がんや食道がんのリスクを高めるため、野菜や果物を多く摂取することで、大腸がんのリスクを下げることができます。
正しい知識を持ち、科学的根拠に基づいた健康習慣を実践することで、がんのリスクを大幅に減らしましょう。

第2部:秋野暢子さん講演「私らしく今を生きる」
(要約)
私は2022年6月に食道がんを患った話をします。2021年12月頃から喉に違和感を感じていましたが、当時は自律神経の乱れが原因だと信じていました。しかし、固形物が飲み込みづらくなったため再び受診したところ、内視鏡検査で食道がんが発見されました。医師からがんであると告げられた時は、ドラマのように頭が真っ白になることはなく、不調の原因がわかったことで治療に専念する覚悟ができたのは意外でした。検査の結果、ステージ3であり、首や食道付近に複数のがんが見つかりました。
手術では声帯を取る必要があると言われました。声を失うのは仕事も含めた私の人生に大きな影響を与えるため、自分らしく生きるために私は化学放射線療法を選択しました。治療の過程では、化学療法の副作用(晩期)や放射線による皮膚障害を経験しましたが、ポジティブな考え方で乗り越えてきました。幸い大きながんは消滅し、残りの小さながんも内視鏡で切除することができました。約4か月の入院を経て、9個のがんが消え、寛解に至りましたが、現在も定期的な検査を続けています。
私は治療に専念するだけでなく、仕事や旅行、絵画個展の開催など、充実した生活を送ることを大切にしています。病気だけの人生はもったいないと感じています。個展の売り上げの一部を寄付することで社会に貢献することも意識するようになりました。
私は「病は知から」と考えています。正しい知識を持ち、ポジティブな思考で過ごすことで、がんの恐怖を克服できると信じています。治療と日常生活のバランスを保ちながら、笑顔で過ごすこともがんと闘うために大切だと思います。毎朝鏡の前で笑顔を作り、幸せ日記をつけることで精神的な健康を維持しています。
ヘレン・ケラーの「知識は幸福である」という言葉を信じ、がんについて正しい知識を持つことで恐怖を和らげ、充実した人生を送ることを目指しています。これからも正しい治療と医師とのコミュニケーションを重視し、患者会やブログで仲間とのつながりを持ちながら、前向きに生きていく姿勢をこれからも大切にしていきたいと考えています。


講演後のトークセッションでは、それぞれの講演を聞いての感想を述べながら、具体的な飲酒量の目安、情報の取捨選択の方法などについて意見が交わされました。また様々な情報に惑わされないためには主治医や医療スタッフとコミュニケーションを取り、信頼関係を構築することが大切と述べられていました。


今回で第20回を迎えた「がん克服シンポジウム」ですが、これからも時代の変化に合わせた方法を模索し、多くの県民が日常生活の中で取り組めるがん予防の生活習慣づくりやがん検診の普及を推進してまいります。また、地域がん診療連携拠点病院制度など、がん医療に関する情報の提供にも力を注ぎ、県民の皆様の健康づくりを支えてまいります。
がん克服シンポジウムチラシ画像拡大表示
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過去のがん克服シンポジウム

【第19回がん克服シンポジウム】講演内容
乳がんなんてこわくない
 〜自分を守り、みがき、越えていく〜

乳がんは早期発見であれは治る可能性も高く、その死亡率は1.5%と決して高くはない病気です。しかしその罹患率は年々上昇を続けており、いまは女性がかかるがんの第1位で、女性の9人に1人がかかるとも言われています。また早期発見のために大切な乳がん検診の神奈川県における受診率は48.4%と決して十分ではないのが現状です。こうした状況を踏まえて、2024年2月18日神奈川県民共済みらいホールにて「乳がんなんてこわくない〜自分を守り、みがき、越えていく〜」をテーマに第19回がん克服シンポジウムを開催しました。

第1部は湘南記念病院乳がんセンターセンター長 土井卓子先生に「乳がんと向き合う」と題してお話をしていただきました。
土井先生は現代女性が乳がんをどうとらえたらよいかについて、「怖がらずに向き合うことが大切」と述べられました。生活習慣やライフスタイルの変化によって乳がんのリスクが上がっているのが現在の罹患者数の増加の一因であると指摘し、かかりにくい生活習慣を知りリスクを減らす生活をしましょう(一次予防)と述べられました。また、マンモグラフィーが早期発見に非常に有効だと言及し、検診をぜひ受けてほしいと述べるとともに、常に乳房の変化に気を付けるブレストアウェアネスを実践しましょうと会場の参加者と自己触診の実演を行いました。その上でいつもと違うと感じたら医療機関へ、そうでない方は検診を定期的に受けるのが早期発見につながる、検診とブレストアウェアネスを組み合わせるのが命を危険にさらさない方法(二次予防)だと話されました。
また、最近の乳がんの治療は手術を最小限にとどめ、薬物治療や放射線治療をメインとするのが主流となっており、吐き気や脱毛などの副作用対策も進んでいるため「がんになっても怖がらずに楽にうまく治療をして命を安全にして楽しく長く生きることが出来る」と述べられました。その一方で、治療は長期間に及ぶことから、乗り切るには周囲の理解と支えが不可欠であるため、乳がんでない人にも病気や治療について知ってほしいと話されました。

第2部は歌手の麻倉未稀さんも迎えて、お二人のトークセッションが行われました。
テレビ番組での企画がきっかけで乳がんが発覚した麻倉さんが仕事や家族の闘病などで検診から足が遠のいてしまう時期があったと話すと、土井先生も医療機関を受診する前に自覚症状があった患者さんが意外と多いと同調。乳がん検診を一人でも多くの人に受けてほしいとお二人が取り組まれている「ピンクリボン活動」について、その思いを語られました。「乳がんだけでなく2人に1人はなんらかのがんになる時代。ならないようにするのは難しいので、なってしまった時に、いかにそれを乗り越えて糧にしていくかが大切。治療中に大変なことは沢山あるけれど、今は相談できる場所や支えになれるところがたくさんあるので、一人ではないと伝えたい」と会場の皆さんにメッセージを送られました。
最後に麻倉さん自身が闘病の際に勇気づけられた曲、そして沢山のがんと闘う人に寄り添いたいという思いを込めて作った曲を熱唱。魂のこもった歌声に涙を流す方もいらっしゃいました。
事前申し込みが早々に定員に到達するほど、世の中の乳がんに対する関心が高いことを痛感させられた今回のシンポジウム、一人でも多くの人が乳がんを正しく知り、向き合ったり互いに支えあったりしながら、豊かな人生を歩んでいただきたいと願わずにはいられませんでした。
麻倉未稀さん画像
土井卓子先生の take home message
・若い時から自分の体に常に関心を持ちましょう
・子宮がん・乳がんは20代から発症します
・他人事だとは思わないでください
・自己触診・検診の重要性をご家族お友達にも広げてください。
 助かる人が必ずあなたの周りにいます
・助かる命を危険にさらさないでください
・ブレストアウェアネスを知ってください
土井卓子先生
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