かながわ健康財団
がん対策

過去開催 がん克服シンポジウム

第18回がん克服シンポジウム

第18回がん克服シンポジウム
女性の健康とがん 〜みらいを守る 子宮頸がん予防〜


第18回がん克服シンポジウムは終了しました。ご参加ありがとうございました。

●シンポジウムで皆様からよせられた質問と回答は こちら

●今野 良 先生(自治医科大学附属さいたま医療センター 産婦人科教授) のHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン資料

「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンー有効性と安全性の高いワクチンで命と健康と家族を守ろう」は こちら


子宮頸がんは、発症年齢が若く「マザーキラー」とも呼ばれますが、ワクチンの接種と定期的な検診の組み合わせにより95%以上予防することができると言われています。
正しいワクチンと検診の知識、健康と未来を守るための子宮頸がん予防の大切さをお伝えします。

日 時:令和5年1月28日(土) 14:30〜17:00
会 場:相模女子大学 3号館 314教室

・「HPVワクチンを知らなかった」で後悔しないように
  講師 勝田 友博 氏
  聖マリアンナ医科大学 医学部医学科小児科 准教授

・「みらいを守る 子宮頸がん予防」
  講師 今野 良 氏
  自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科 教授
(講演順)

がん克服シンポジウム「女性の健康とがん〜みらいを守る子宮頸がん予防〜チラシ拡大表示(別ウィンドウで開きます)

pict

第16回がん克服シンポジウム

第16回 がん克服シンポジウムのテーマは

「コロナ禍におけるがん検診の大切さ」

コロナ禍でがん検診の受診者数が減っています。この新型コロナによる国内死亡者数は4000人を超え、一方でがんによる年間死亡者数は38万人を超えています。
改めて、このコロナ禍におけるがんの早期発見、がん検診の重要さ、そして感染を恐れすぎてがん検診・治療を控えることがないよう、かかる人の多い大腸がん、肺がん、乳がんについて気を付けるべきポイントも含め分かりやすく発信します。

日 時:令和3年2月6日(土) 14:00〜16:30 (会場13:30)

会 場:オンライン配信

講 師:山王病院 内科部長 大久保 政雄 氏
    藤沢市民病院 副院長 西川 正憲 氏
    湘南記念病院 乳がんセンター長 土井 卓子 氏
    (講演順)

座 長:公益財団法人日本対がん協会
    がん検診研究グループマネジャー小西 宏 氏

定 員:1.オンライン配信 300名
     ※応募者多数の場合は、抽選

参加費:無料


[問い合わせ]
かながわ健康財団 がん対策推進室
(がん克服シンポジウム実行委員会事務局)
電 話:045-243-6933(9:00〜17:00)

がん克服シンポジウムチラシ

第15回がん克服シンポジウム

第15回がん克服シンポジウムのテーマは、

「正しく知ろう最新のがん医療」

最近、よく耳にするゲノム医療、免疫療法、重粒子線治療など最新のがん治療のついて、わかりやすく解説していただきました。

1 日 時 令和2年1月18日(土)14:00〜16:30

2 会 場 神奈川県総合医療会館7階 講堂

3 実施組織
(1) 主 催  がん克服シンポジウム実行委員会(7機関)
神奈川県、(公社)神奈川県医師会、(公社)神奈川県看護協会、(一社)神奈川県歯科医師会、(公社)神奈川県病院協会、(公社)神奈川県薬剤師会、(公財)かながわ健康財団 (順不同)
(2) 協 賛  アフラック生命保険株式会社、東京海上日動火災保険株式会社、日本生命保険相互会社
(3) 事務局  (公財)かながわ健康財団がん対策推進本部

R1チラシ拡大表示(別ウィンドウで開きます)

4 内 容
(1) 講演1 「がんを治すための最新知識」
   講師 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター病院長 大川伸一 氏

(2) 姿勢調整体操
   講師 公益財団法人かながわ健康財団 健康運動指導士 高垣茂子

(3)  講演2 「がんゲノム医療って何?」
   講師 北里大学病院集学的がん診療センター長 佐々木治一郎 氏
講演1 「がんを治すための最新知識」要旨
講師 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター病院長 大川 伸一 先生
 がん医療は進歩しているのに亡くなる人が増えている。それは、日本の人口構成比、高齢化が原因。高齢者は抵抗力も若い人に比べて弱く、肺炎になりやすく強い薬の副作用に耐えられる体力がない場合が多い。統計では60数%、3分の2の人は治っており、5年生存率も増えている。年齢調整死亡率で死亡率は確実に下がっており、(40年前の年齢構成比だったら、確実に死亡率は下がっている)、医療は確実に進歩していると言える。

 がんの治療は手術、放射線療法、化学療法(がん薬物療法)が三本柱である。化学療法の中に入ってくるがんゲノム医療は将来すべてにかかわってくる可能性がある。
『手 術』 
 以前手術は大きく組織を取り除くものが主流だったが、現在では内視鏡、さらにロボット支援システムを使用した傷をできるだけ小さくするものになってきた。この十年で開腹手術とロボットを使用した手術の件数が逆転しているが、根治性に関してその二つの違いはそれほど大きくない。回復に関しては、傷が小さい分、ロボット手術の方が早いといえる。すい臓がんにもこのロボット手術がこの春から保険が適用される見込み。
『化学療法』
 分子標的薬が発達し、主流だったが、近年は、本庶先生の功績により、免疫チェックポイント阻害薬がより大きな成果を上げている。今は治療薬がなくなった人に使用しているが、今後はもっと広く使用できるようになると思われる。一方、薬剤費は右肩上がりで多くなっている。がんゲノム医療で治療法が見つかる人はまだ少ないが、今後、治験などが進むとぐっと多くなる可能性がある。
『放射線治療』
 神奈川県立がんセンターでは重粒子線治療を行っている。重粒子線治療では、転移はないが手術が難しい人、高齢の人、長期間休めない人などに向いている。

 日本人の二人に一人ががんになる時代なので、がんと告知された時のために、ふだんから家族と話し合っておくことが大切である。また、ネットの情報ばかりに頼らない(ニセ情報も多い)、焦らない、セカンドオピニオンを受けてみるのがよい。
 日本ではがん検診率はまだまだ低い状況にある。早期発見であれば、色々な面で負担が少なくなる。がんの遺伝子要因、がんを発症しやすい体質か心配な方は遺伝カウンセリング外来、その他相談が必要な方はがん相談支援センターががん診療連携拠点病院に設置されている。
講演2 「がんゲノム医療って何?」要旨
講師 北里大学病院集学的がん診療センター長   佐々木 治一郎 先生
 がんと遺伝子の関係は2つ。「がん細胞と遺伝子との関係」と「がんになった身体(体質)と遺伝子の関係」である。傷ついた細胞が複数修復されないとがん化する。なぜ、細胞は傷つくのか?細胞が喫煙や感染症などの環境要因により傷つくことは判明している。しかし、半数近くの原因は偶然(わかっていない)。また、慢性の炎症がある・加齢・体質に因って傷ついた細胞の修復機能は落ちるので、がんのリスクが高くなる。体質は遺伝する場合もあり、家系内に多発することは古くから知られている。遺伝素因が大きいがんと小さいがんがあり、肺がんは小さく、乳がんは大きい。がんは、多段階における複数の細胞の異常で発生する。その複数の遺伝子異常の中で、がん細胞の存在に強力な力を有する遺伝子異常をドライバーがん遺伝子異常と呼び、分子標的治療薬のターゲットになる。
 がん薬物療法に関係する薬剤は細胞傷害性抗がん薬(抗がん剤)、分子標的治療薬、内分泌療法薬の三種類あるが、がんゲノム医療に関係するものは主に前の2つ。抗がん剤がどうゲノム医療に関係してくるかというと、遺伝子を調べる事により、最適な薬と紐づけ、または使用しなくてもよいということがわかる。分子標的治療薬は、がんゲノム医療の申し子のようなもの。免疫チェック阻害剤もこの一つ。免疫チェック阻害剤は細胞を活性化させてがんに打撃を与えるもの。免疫チェック阻害剤は遺伝子変異の数が関係している。ドライバー遺伝子異常の探索をアンブレラ試験、バスケット試験などで行い、薬の開発も行われている。肺がんでは2017年から遺伝子変異を調べて最適な薬を投与している。
 がんゲノム医療は、がん細胞の遺伝子変容、パターンを調べて一番よい治療をマッチングさせるもの。パネル検査という方法で多数の遺伝子を可能になった。がん遺伝子パネル検査を利用したのが、がんゲノム医療。効果予測は100%ではない。最適な薬も効かない人がいる。

【質疑応答】
Q1:がんゲノム医療はどこで受けられるのか(2019年9月現在)
A1:がんゲノム医療中核拠点病院(全国11病院、神奈川県にはない)。その他、がんゲノム医療拠点病院(全国34病院:県立がんセンター、聖マリアンナ医科大学病院、東海大学医学部附属病院がんゲノム医療連携病院(全国122病院) 県立こども医療センター、北里大学病院、横浜市立市民病院、横浜市立大学附属病院)で受けられる。

Q2:がんゲノム医療は誰でも受けられるのか。
A2:条件あり。血液系のがんは対象ではないなど。固形がん、原発不明がんは対象。

Q3:がんゲノム医療はいくらかかるのか。
A3:保健の場合3割適用で56万円が検査でかかる(コンサル料48万円含む。医師が複数治療に関して検討する)。病理関係の検査では今一番高額である。

Q4:がんゲノム医療とはどんな治療なのか。
A4:治療ではない。がん細胞の遺伝子情報をもとに最適な治療薬をマッチングする医療のこと。

Q5:がんゲノム医療の問題点は何か。
A5:検体が三年以内のものを推奨。パネル検査が高額、自費診療になる場合がある。治療薬にたどり着ける確率1割強。負担を少なくするには、治験、その次に先進医療・患者申し出療養がよい。
  • 講師:大川伸一氏

    大川病院長拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 講師:佐々木治一郎氏

    佐々木先生拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 姿勢調整体操

    高垣拡大表示(別ウィンドウで開きます)

space

第14回がん克服シンポジウム

第14回目を迎える今回のシンポジウムテーマは、

「人生100歳時代の強敵!すい臓がん がんロコモを攻略する!!」

最近増加している すい臓がん。
著名人の訃報でも目にすることが多く、とても強敵ながんですが、少しずつ病態・診断・治療に関しても進歩もみられます。
今回のシンポジウムでは、その原因、診断、最新の治療法を紹介しました。
また、がんになっても動けるように、「がんロコモ」による運動機能障害への対策を紹介しました。

1 日 時 平成31年1月19日(土) 14:00〜16:30

2 会 場 神奈川県総合医療会館 7階講堂

3 実施組織
(1) 主 催  がん克服シンポジウム実行委員会(7機関)
神奈川県、(公社)神奈川県医師会、(公社)神奈川県看護協会、(一社)神奈川県歯科医師会、(公社)神奈川県病院協会、(公社)神奈川県薬剤師会、(公財)かながわ健康財団 (順不同)
(2) 協 賛  アフラック生命保険株式会社、住友生命保険相互会社 東京海上日動火災保険株式会社
(3) 事務局  (公財)かながわ健康財団がん対策推進本部

H30チラシ拡大表示(別ウィンドウで開きます)

4 内 容
(1) 講演1:「すい臓がん:治らないがんから治るがんへ」
   講師 静岡県立静岡がんセンター 病院長代理兼肝胆膵外科部長 上坂 克彦 氏

(2) 講演2:「がんとロコモティブシンドローム 〜がんになっても動けるように〜」
   講師 国立病院機構東京医療センター整形外科医長・骨軟部腫瘍センター長 森岡 秀夫 氏

(3) ロコモ体操
   講師 かながわ健康財団 健康運動指導士 高垣茂子
  • 講師:上坂克彦氏

    上坂講師拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 講師:森岡秀夫氏

    森岡講師拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • ロコモ体操

    ロコモ体操拡大表示(別ウィンドウで開きます)

space

第13回がん克服シンポジウム

第13回がん克服シンポジウムテーマは、

「今日から使える!がん情報 −自分と家族のために−」

科学的根拠に基づくがん予防のお話や、がんと心の問題についてお話をいただきました。

1 日 時 平成30年1月13日(土) 14:00〜16:30

2 会 場 神奈川県総合医療会館 7階 講堂

3 実施組織 (1) 主 催  がん克服シンポジウム実行委員会(7機関)
神奈川県、(公社)神奈川県医師会、(公社)神奈川県看護協会、(一社)神奈川県歯科医師会、(公社)神奈川県病院協会、(公社)神奈川県薬剤師会、(公財)かながわ健康財団 (順不同)
(2) 協 賛  東京海上日動火災保険株式会社
(3) 事務局  (公財)かながわ健康財団がん対策推進本部

H29チラシ

4 内 容
(1) 講演1 「根拠があるから信じられる!日常生活でがんを予防する方法」
   講師 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長  津金 昌一郎 氏

(2) 講演2 「がんと診断される前に知っておきたい知識と心構え」
   講師 埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科教授  大西 秀樹 氏
講演1 根拠があるから信じられる!日常生活でがんを予防する方法
講 師 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長 津金 昌一郎 氏
 生涯でがんにかかる人は、2人に1人であり、またがんで死亡する人は男性4人に1人、女性6人に1人となっている。また、男性は死亡年齢60〜74歳が全体の4割を超えているのに対して、女性の場合は35〜74歳が4割を超えている。こうしてみると、ライフステージに応じたがん対策が必要である。40代くらいの働き盛りの年代では「がんにならない、がんで命を落とさない」ために、高齢になるに従いQOLを第一に考えた予防・早期発見・医療・緩和ケア等のがん対策を行っていく必要がある。
 がん対策、がんで死なないためには、1.「生活習慣・生活環境の改善などで、がんにならないように、予防する」、2.「がん検診を受ける」(身体の異常に気づいたら、すぐに医療機関を受診する、症状がなくても、有効ながん検診(胃、肺、大腸、子宮頚部、乳房)を正しく受ける))、3.「がんになった場合は、最善の治療を受ける」(がん診療連携拠点病院など治療経験が豊富な病院など)が重要である。
 がんに関する正しい知識は、科学的根拠に基づいた情報である必要がある。「発がん性・がん予防効果の確からしさ」は、・数多くのヒトを対象とした研究(疫学研究)で一致したデータ(エビデンス)が示されている、・動物実験データもあれば尚良い、・どうしてそうなるか(メカニズム)が説明可能であるデータが望ましい。
 生活習慣とがん予防では、5つの健康習慣があげられる。
@禁煙。たばこを吸っている男性の場合、吸わない人の1.6倍、女性の場合1.3倍肺がんにかかりやすい。また受動喫煙の問題では、夫が喫煙者の場合、非喫煙者と比べて肺腺がんにかかるリスクが1.34倍になるので、禁煙が非常に重要である。
A飲酒。飲むなら適度に。飲まない人、飲めない人は無理に飲まない。
B身体活動。運動不足が原因となるがんもある。適度な運動を。
C体型。肥満だけでなく、やせすぎでもがんのリスクがあがる。適正体重を。
D食事。塩蔵食品、食塩の摂取は最小限に。極端に熱いものは避け、野菜や果物不足にならない。加工肉、赤肉は摂り過ぎない、不足しない。確かな予防要因であっても、サプリメントで摂り過ぎない(多すぎて健康を害する場合もある)。バランスのよい食事を。
 がん予防のための生活習慣・生活環境の改善は、結果的に健康寿命の延伸につながる。
【質疑応答】
Q1:膵臓がんで亡くなられる方が多いように思うが、何をすれば膵臓がんで死なないですむのか
A1:膵臓がんはもっとも治療が困難ながんの一つで、ならないのが一番いいが、膵臓がんだけならないというより、たばこ、糖尿病、日本人の肥満ではあまりはっきりしないがBMIが30を超すような肥満が、膵臓がんのリスク要因としてわかっている。膵臓がんはなかなか早期発見が難しいので、本日お話したように生活習慣を改善することによって、膵臓がんになるリスクも下がるし、心筋梗塞や脳卒中になるリスクも下がるということで対応していった方がよい。

Q2:赤肉の話があったが、和牛とオーストラリア牛では脂肪分がだいぶ違うが、同じように考えてよいのか
A2:赤肉と表現されると赤身肉と間違えられるが、霜降りでも、赤身の肉でも赤肉なので、霜降り肉でもがんのリスクはあがる。ただし量の問題で、毎日100g以上食べることはやめた方がよいということなので、逆に飽和脂肪酸が足りないと、日本人の場合脳卒中のリスクを上げる。日本人は魚を食べるので、世界の中でも心筋梗塞のリスクは低い。そのため、食べ過ぎてはいけないが、ある程度肉も食べないといけない。

Q3:膵臓がんの患者が余命宣告され、本人は死ぬ気になって家族に迷惑をかけないようにという人がいる。それを聞いてもっと生きる気力を持ってほしいと思い、余命のあいまいさを聞きたい。また対照的に安藤忠雄さんが膵臓がんで五臓を取ったと聞いたが、安藤さんが運動をたくさんすれば自分のように元気でいられると言っておられたので、不思議だなと思ってお聞きした
A3:まず個人の話としては、そういうことがあるかもしれないし、ないかもしれない、あまり振り回されない方がいいと思う。やはり、より正しいことを守るというのが原則である。あと、個人個人で生き方があって、その中で色々な考え方を変えていくというのがいいと思う。
また余命についてだが、がんと診断された時の余命は、大体全体の半分の人、100人いれば50番目の人くらいが大体亡くなる期間なので、それは患者さんに完全にあてはまるかどうかはわからない。場合によってはもっと早く亡くなるかもしれないし、もっと長く生きるかもしれないので、ある程度目安として、亡くなるということに備えることが大事だが、もしかして3か月と言われても3年生きるという可能性はあると考えながら後のことを考えるということだと思う。(安藤忠雄さんについては)五臓を取ったら生きていけないので、大事なところは残したと思う。
講演2 がんと診断される前に…知っておきたい知識と心構え
講 師 埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科教授 大西 秀樹 氏 
 病気というものは固有のイメージがあるが、「がん」はどのようなイメージなのか。多くの場合、「死」を連想する。なぜなら、がんは死亡原因の第一位が続いているからである。それ以外に、がんにより仕事の問題や家庭の問題など様々な問題が生じてくる。だから患者さんたちは大きなストレスを抱えながら治療を受けなければならない。そのひとつひとつのストレスが精神科の疾患の原因になっており、約2割から4割の方が不安やうつで悩んでいて、精神科の治療が必要なことがわかっている。
 「悪い知らせとこころの動き」についてだが、がん告知は、患者さんの将来への見通しを根底的から否定的にかえてしまうものである。がん告知後、衝撃の時期が1週間程度続く。しかし、私たちには回復する力があり、1週〜2週間の不安・抑うつの時期(この時期は辛い)を経て、2週間くらいすると元にもどってくる。けれども、半数の人はうまく適応できないので、我々精神科医が治療をして、元の状態に戻すように努力をしている。
 なぜ、がん患者さんの精神症状へ対応するのか?それは、精神症状は”苦痛である”ということ。抗がん剤の副作用の辛さとうつ病の辛さはどちらが辛いかと問うと、100人中99人はうつの方が辛いと答える、それほどうつ病はつらいということを覚えておいてほしい。ほかにも、精神症状があると、意思決定障害、家族の精神的苦痛、入院期間の延長、自殺率上昇などがあり、精神症状改善は治療に必須である。辛い人を見つけるには、常にうつ病を疑うこと、また、眠れない、食欲がない、テレビを見ない、新聞を読まないなど、当たり前のことができないなどがある。
 心の問題でどういった治療をするかというと、まずうつ病の場合には薬物療法を行うが、がん患者さんはたくさんのお薬を飲まれているので、必要最小限の投与を行い、薬物療法よりも精神療法がメインである。精神療法とは、患者さんの話を聴き、問題点を理解し、解決法を共に考えることである。特にお話を聞くことが一番重要である。聞いて何が一番問題なのかを考える。がんになっても、辛いだけではなく、いろいろなことを考えるようにすると心が楽になってくる。
 再発後、身体は衰えても最後までメンタルを保つためにはどうするか。できないことを考えるより、できることを考える。がんと宣告されてからの、苦悩、もがきを経て人間的成長を遂げる人がいる。それを<心的外傷後成長>という。(危機的な出来事や困難な経験との精神的なもがき・闘いの結果生じる、ポジティブな心理的変容の体験)
 看取りについて。我々は人生について大事なことは、フランクルの「夜と霧」にも書かれているように、人生から出す問いに答えることだと言われている。 人生最後まで生きる意味がある。
 また、家族は第二の患者である。なぜ家族のケアが必要かというと、うつ傾向になる人が3割くらいいるから。
 死別について。日常生活におけるストレスのトップは死別である。がん患者の遺族にケアが必要なのは、まずQOLが低い。また心臓疾患で亡くなる方やうつ病になる方が多い。一番怖いのが自殺率の上昇である。不安・緊張を介入によって軽減できることがわかっている。
 遺族が受けている周囲からの援助は、実は、8割が有害だと言われている。
 周囲からの言葉かけについて、「寿命だったのよ」「気付かなかったの?」「元気そうね」「でも、これで…」「いつまでも悲しまないで」などは67%の人が辛いと感じる。
 周囲からの援助には【有害援助】(動)と【有用援助】(静)がある。
【有害援助】・アドバイスをする・回復を鼓舞する・陽気に振舞う。・不遜な態度をとる。
・過小評価・私はあなたが分かる
【有用援助】・同じ境遇の人と接する・感情を吐き出す機会を持つ(しゃべってもらう)・誠実な関心を示す・そばにいる。
 患者、家族への有用な援助は、静的なものであることを覚えておいてほしい。
 こうして今回の講演も含めて、自分たちの持っている知識を新しくして、日々勉強し周りの困っている人に役立ててほしい。
【質疑応答】
Q1:かかっている病院で精神腫瘍科がない場合、どちらに相談すればよいのか。
A1:いくつか方法があり、クリニックに受診するのも一つの方法であるが、ひとつ問題があって、がんのことをあまり知らない先生だと細かいことを質問できないことがある。その場合、「日本サイコオンコロジー学会」ホームページの「活動紹介」の中に「日本サイコオンコロジー学会認定登録精神腫瘍医制度」があり、がん患者さんを診る医者のリストがあるので見てください。それでも病院が遠いようなら、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに電話をし「精神科の治療を受けたい」と伝えると情報を持っていることがある。

Q2:膵臓がんのステージWの患者の家族が食事を作っても食べてくれない、コントロール不能だと悩んでいるのに対して、コントロールできないことに苦労してもしょうがないと伝えたことは有用援助であったのか。また有用援助したいと思ったときに、きれいな絵を持っていって慰めたいが押しつけがましいのか。
A2:ご家族への対応としては、お話を聞いて、問題点を把握して対応可能な問題に対応する。対応不可能なことは置いておいた方がよい。絵についても、好きだったらよいが、押しつけにならないように気を付けてほしい。押しつけというのは患者さんたちが嫌がる。

Q3:100歳まで生きたい。
A3:津金先生のお話にもあったように、いい食生活や運動などをするというのが一番である。私はメンタルケアの専門家なので、やたら怒らない、お友だちがいた方がいい、あとは体を自分で常にチェックすることが大事なのではないか。
  • 講師:津金 昌一郎氏

    津金先生拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 講師:大西 秀樹氏

    大西先生拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 会場の様子

    会場の様子拡大表示(別ウィンドウで開きます)

space

第12回がん克服シンポジウム

第12回がん克服シンポジウムテーマは、「女性の健康とがん」

1 日 時 平成29年2月11日(土)14:00〜16:30

2 会 場 神奈川県民ホール小ホール (横浜市中区山下町3−1)

3 内 容
(1) 講演1 「守ってあげたい いのちを懸けて」
   講師 参議院議員 三原じゅん子 氏

(2) 講演2 「知っていますか?子宮がんのこと、卵巣がんのこと」
   講師 相模野病院婦人科腫瘍センター長、北里大学医学部客員教授 上坊敏子 氏

(3) 講演3 「女性のがんとリンパ浮腫」
   講師 神奈川県立がんセンター 看護局・リンパ浮腫相談外来担当、主任看護師、緩和ケア認定看護師
   山本香奈恵 氏

4 実施組織
(1) 主 催  がん克服シンポジウム実行委員会(7機関)
神奈川県、(公社)神奈川県医師会、(公社)神奈川県看護協、(一社)神奈川県歯科医師会、(公社)神奈川県病院協会、(公社)神奈川県薬剤師会、(公財)かながわ健康財団 (順不同)
(2) 協 賛  東京海上日動火災保険株式会社
(3) 事務局  (公財)かながわ健康財団がん対策推進本部

  • 講師:三原じゅん子氏

    三原じゅん子氏拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 出演者質疑応答

    出演者質疑応答拡大表示(別ウィンドウで開きます)

  • 会場の様子

    会場の様子拡大表示(別ウィンドウで開きます)

PageTop