かながわ健康財団
がん対策

がん予防の取り組み

かながわ健康財団がん対策推進本部では、さまざまながん予防事業に取り組んでいます。

がん克服シンポジウム
がん予防市民公開講座
全国巡回がんセミナー
過去のがん克服シンポジウム

がん克服シンポジウム

第13回目を迎えた今回のシンポジウムテーマは、「今日から使える!がん情報 −自分と家族のために−」

科学的根拠に基づく、信頼できるがん情報や予防法、がんと診断されたときの、ご本人やご家族、周りの方の心構えについてご講演いただきました。

第13回 がん克服シンポジウム
日 時:平成30年1月13日(土) 14:00〜16:30 (会場13:30)
会 場:神奈川県総合医療会館 7階講堂

講演1:「根拠があるから信じられる!日常生活でがんを予防する方法」
    講師 津金 昌一郎 氏
    国立がん研究センター 社会と健康研究センター長


講演2:「がんと診断される前に…知っておきたい知識と心構え」
    講師 大西 秀樹 氏
    埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科教授
内 容:【講演1】根拠があるから信じられる!日常生活でがんを予防する方法
講 師:講師 津金 昌一郎 氏 国立がん研究センター 社会と健康研究センター長
生涯でがんにかかる人は、2人に1人であり、またがんで死亡する人は男性4人に1人、女性6人に1人となっている。また、男性は死亡年齢60〜74歳が全体の4割を超えているのに対して、女性の場合は35〜74歳が4割を超えている。こうしてみると、ライフステージに応じたがん対策が必要である。40代くらいの働き盛りの年代では「がんにならない、がんで命を落とさない」ために、高齢になるに従いQOLを第一に考えた予防・早期発見・医療・緩和ケア等のがん対策を行っていく必要がある。
がん対策、がんで死なないためには、1.「生活習慣・生活環境の改善などで、がんにならないように、予防する」、2.「がん検診を受ける」(身体の異常に気づいたら、すぐに医療機関を受診する、症状がなくても、有効ながん検診(胃、肺、大腸、子宮頚部、乳房)を正しく受ける))、3.「がんになった場合は、最善の治療を受ける」(がん診療連携拠点病院など治療経験が豊富な病院など)が重要である。
がんに関する正しい知識は、科学的根拠に基づいた情報である必要がある。「発がん性・がん予防効果の確からしさ」は、・数多くのヒトを対象とした研究(疫学研究)で一致したデータ(エビデンス)が示されている、・動物実験データもあれば尚良い、・どうしてそうなるか(メカニズム)が説明可能であるデータが望ましい。
生活習慣とがん予防では、5つの健康習慣があげられる。
@禁煙。たばこを吸っている男性の場合、吸わない人の1.6倍、女性の場合1.3倍肺がんにかかりやすい。また受動喫煙の問題では、夫が喫煙者の場合、非喫煙者と比べて肺腺がんにかかるリスクが1.34倍になるので、禁煙が非常に重要である。
A飲酒。飲むなら適度に。飲まない人、飲めない人は無理に飲まない。
B身体活動。運動不足が原因となるがんもある。適度な運動を。
C体型。肥満だけでなく、やせすぎでもがんのリスクがあがる。適正体重を。
D食事。塩蔵食品、食塩の摂取は最小限に。極端に熱いものは避け、野菜や果物不足にならない。加工肉、赤肉は摂り過ぎない、不足しない。確かな予防要因であっても、サプリメントで摂り過ぎない(多すぎて健康を害する場合もある)。バランスのよい食事を。
がん予防のための生活習慣・生活環境の改善は、結果的に健康寿命の延伸につながる。
【質疑応答】
Q1:膵臓がんで亡くなられる方が多いように思うが、何をすれば膵臓がんで死なないですむのか

A1:膵臓がんはもっとも治療が困難ながんの一つで、ならないのが一番いいが、膵臓がんだけならないというより、たばこ、糖尿病、日本人の肥満ではあまりはっきりしないがBMIが30を超すような肥満が、膵臓がんのリスク要因としてわかっている。膵臓がんはなかなか早期発見が難しいので、本日お話したように生活習慣を改善することによって、膵臓がんになるリスクも下がるし、心筋梗塞や脳卒中になるリスクも下がるということで対応していった方がよい。

Q2:赤肉の話があったが、和牛とオーストラリア牛では脂肪分がだいぶ違うが、同じように考えてよいのか

A2:赤肉と表現されると赤身肉と間違えられるが、霜降りでも、赤身の肉でも赤肉なので、霜降り肉でもがんのリスクはあがる。ただし量の問題で、毎日100g以上食べることはやめた方がよいということなので、逆に飽和脂肪酸が足りないと、日本人の場合脳卒中のリスクを上げる。日本人は魚を食べるので、世界の中でも心筋梗塞のリスクは低い。そのため、食べ過ぎてはいけないが、ある程度肉も食べないといけない。

Q3:膵臓がんの患者が余命宣告され、本人は死ぬ気になって家族に迷惑をかけないようにという人がいる。それを聞いてもっと生きる気力を持ってほしいと思い、余命のあいまいさを聞きたい。また対照的に安藤忠雄さんが膵臓がんで五臓を取ったと聞いたが、安藤さんが運動をたくさんすれば自分のように元気でいられると言っておられたので、不思議だなと思ってお聞きした

A3:まず個人の話としては、そういうことがあるかもしれないし、ないかもしれない、あまり振り回されない方がいいと思う。やはり、より正しいことを守るというのが原則である。あと、個人個人で生き方があって、その中で色々な考え方を変えていくというのがいいと思う。
また余命についてだが、がんと診断された時の余命は、大体全体の半分の人、100人いれば50番目の人くらいが大体亡くなる期間なので、それは患者さんに完全にあてはまるかどうかはわからない。場合によってはもっと早く亡くなるかもしれないし、もっと長く生きるかもしれないので、ある程度目安として、亡くなるということに備えることが大事だが、もしかして3か月と言われても3年生きるという可能性はあると考えながら後のことを考えるということだと思う。(安藤忠雄さんについては)五臓を取ったら生きていけないので、大事なところは残したと思う。
内 容:【講演2】がんと診断される前に…知っておきたい知識と心構え
講 師:講師 大西 秀樹 氏
    埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科教授
病気というものは固有のイメージがあるが、「がん」はどのようなイメージなのか。多くの場合、「死」を連想する。なぜなら、がんは死亡原因の第一位が続いているからである。それ以外に、がんにより仕事の問題や家庭の問題など様々な問題が生じてくる。だから患者さんたちは大きなストレスを抱えながら治療を受けなければならない。そのひとつひとつのストレスが精神科の疾患の原因になっており、約2割から4割の方が不安やうつで悩んでいて、精神科の治療が必要なことがわかっている。
「悪い知らせとこころの動き」についてだが、がん告知は、患者さんの将来への見通しを根底的から否定的にかえてしまうものである。がん告知後、衝撃の時期が1週間程度続く。しかし、私たちには回復する力があり、1週〜2週間の不安・抑うつの時期(この時期は辛い)を経て、2週間くらいすると元にもどってくる。けれども、半数の人はうまく適応できないので、我々精神科医が治療をして、元の状態に戻すように努力をしている。
なぜ、がん患者さんの精神症状へ対応するのか?それは、精神症状は”苦痛である”ということ。抗がん剤の副作用の辛さとうつ病の辛さはどちらが辛いかと問うと、100人中99人はうつの方が辛いと答える、それほどうつ病はつらいということを覚えておいてほしい。ほかにも、精神症状があると、意思決定障害、家族の精神的苦痛、入院期間の延長、自殺率上昇などがあり、精神症状改善は治療に必須である。辛い人を見つけるには、常にうつ病を疑うこと、また、眠れない、食欲がない、テレビを見ない、新聞を読まないなど、当たり前のことができないなどがある。
心の問題でどういった治療をするかというと、まずうつ病の場合には薬物療法を行うが、がん患者さんはたくさんのお薬を飲まれているので、必要最小限の投与を行い、薬物療法よりも精神療法がメインである。精神療法とは、患者さんの話を聴き、問題点を理解し、解決法を共に考えることである。特にお話を聞くことが一番重要である。聞いて何が一番問題なのかを考える。がんになっても、辛いだけではなく、いろいろなことを考えるようにすると心が楽になってくる。
再発後、身体は衰えても最後までメンタルを保つためにはどうするか。できないことを考えるより、できることを考える。がんと宣告されてからの、苦悩、もがきを経て人間的成長を遂げる人がいる。それを<心的外傷後成長>という。(危機的な出来事や困難な経験との精神的なもがき・闘いの結果生じる、ポジティブな心理的変容の体験)
看取りについて。我々は人生について大事なことは、フランクルの「夜と霧」にも書かれているように、人生から出す問いに答えることだと言われている。人生最後まで生きる意味がある。
また、家族は第二の患者である。なぜ家族のケアが必要かというと、うつ傾向になる人が3割くらいいるから。
死別について。日常生活におけるストレスのトップは死別である。がん患者の遺族にケアが必要なのは、まずQOLが低い。また心臓疾患で亡くなる方やうつ病になる方が多い。一番怖いのが自殺率の上昇である。不安・緊張を介入によって軽減できることがわかっている。
遺族が受けている周囲からの援助は、実は、8割が有害だと言われている。
周囲からの言葉かけについて、「寿命だったのよ」「気付かなかったの?」「元気そうね」「でも、これで…」「いつまでも悲しまないで」などは67%の人が辛いと感じる。
周囲からの援助には【有害援助】(動)と【有用援助】(静)がある。
【有害援助】・アドバイスをする・回復を鼓舞する・陽気に振舞う。・不遜な態度をとる。
・過小評価・私はあなたが分かる
【有用援助】・同じ境遇の人と接する・感情を吐き出す機会を持つ(しゃべってもらう)・誠実な関心を示す・そばにいる。
患者、家族への有用な援助は、静的なものであることを覚えておいてほしい。
こうして今回の講演も含めて、自分たちの持っている知識を新しくして、日々勉強し周りの困っている人に役立ててほしい。
【質疑応答】
Q1:かかっている病院で精神腫瘍科がない場合、どちらに相談すればよいのか。

A1:いくつか方法があり、クリニックに受診するのも一つの方法であるが、ひとつ問題があって、がんのことをあまり知らない先生だと細かいことを質問できないことがある。その場合、「日本サイコオンコロジー学会」ホームページの「活動紹介」の中に「日本サイコオンコロジー学会認定登録精神腫瘍医制度」があり、がん患者さんを診る医者のリストがあるので見てください。それでも病院が遠いようなら、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに電話をし「精神科の治療を受けたい」と伝えると情報を持っていることがある。

Q2:膵臓がんのステージWの患者の家族が食事を作っても食べてくれない、コントロール不能だと悩んでいるのに対して、コントロールできないことに苦労してもしょうがないと伝えたことは有用援助であったのか。また有用援助したいと思ったときに、きれいな絵を持っていって慰めたいが押しつけがましいのか。

A2:ご家族への対応としては、お話を聞いて、問題点を把握して対応可能な問題に対応する。対応不可能なことは置いておいた方がよい。絵についても、好きだったらよいが、押しつけにならないように気を付けてほしい。押しつけというのは患者さんたちが嫌がる。

Q3:100歳まで生きたい。
A3:津金先生のお話にもあったように、いい食生活や運動などをするというのが一番である。私はメンタルケアの専門家なので、やたら怒らない、お友だちがいた方がいい、あとは体を自分で常にチェックすることが大事なのではないか。
講師:津金 昌一郎氏

津金先生

講師:大西 秀樹氏

大西先生

会場の様子

会場の様子

がん予防市民公開講座

がん予防市民公開講座


平成29年度のがん予防市民公開講座は、罹患率(かかる率)が急速に増加している「乳がん」について、乳がん治療の第一人者、福田護先生をお招きして開催いたしました。

【日 時】 平成30年2月3日(土) 14:00〜15:30

【会 場】 相模原南メディカルセンター 2階 大会議室

【講 師】 聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック院長
      福田 護 先生
講座内容
『今、知りたい!最新の乳がん検診、早期発見・治療』
講師:聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック院長
福田 護 先生
 従来は全員に同じ医療を行っていたが、今、医療は個別化医療と言われ、最適な医療のために検査を行い、グループ分けして、患者さんの個性にあった医療を行うようになってきている。
 既婚、未産、乳がんの27歳の女性のケースでは、まず組織診断をし、悪性度の高いがんのため、化学療法を行うことになったが、お子さんができなくなる(妊孕性の低下)可能性があるため、妊孕性を確保しなくてはならないし、若年で悪性度の高い乳がんの場合、遺伝性の可能性もあるので検査をするかどうかも考えなくてはならない。この方は凍結受精卵を保存する方法を選び、その後化学療法を行い、術後6年目に妊娠し、出産された。この方の場合、患者さんが一番いい医療を選択された。本日お伝えしたいことは、乳がん医療、乳がんの考え方の変化、検診、診断、治療などの進歩により、万人向けの医療から個別化医療、最適医療へ向かっているということである。
 最初に、乳がんの増加と一次予防だが、毎年9万人の方が乳がんにかかり、1万4千人の方が亡くなっている。生涯で乳がんにかかる人は11人に1人である。乳がんの社会的問題は、年齢別の罹患率(かかる率)が、1980年代に比べ、35歳〜60歳後半の増加が大変著しい。なおかつ、ピークが40歳後半並びに60歳代で働き盛りの年齢層に多いが、受診率が高くないというのが問題である。がんは自分の普通の細胞から発生する。そして異常な細胞の集団になった時に、その細胞は自律的に増殖し転移し発病する。なぜ異常な細胞になるかというと、遺伝子にタバコ、アルコール、紫外線、放射線、ウィルス、環境汚染等、さまざまな外的要因)で突然変異が起こるからである。
乳がんにかかるリスクで確実だと言われているのがアルコール、肥満(閉経後)、成人期の高身長(閉経後)であり、ほぼ確実なのが成人期の高身長(閉経前)、腹部肥満(閉経後)、出生時体重が重い(閉経前)、成人になってからの体重増加(閉経後)など。可能性ありが喫煙。また、初経が早い、閉経が遅いなどのリスクファクターに入っている。逆にリスクを下げるのが確実と言われているのが、授乳、ほぼ確実なのが身体活動(閉経後)、可能性ありが身体活動(閉経前)、大豆食品・イソフラボンの摂取である。ただこのリスクをなくすのは困難で、一次予防は難しい。したがって乳がんでは死なないためには二次予防、つまり乳がん検診である。乳がん検診の目的は、乳がんからの救命(乳がん死亡率の減少)であり乳がんを発見することではない。その他に早期発見をすることによって、1.機能温存やQOLの維持、2.乳房温存療療法の施行、3.腋窩リンパ節郭清の縮小、4.全身療法の軽減などが期待できる。マンモグラフィ検診は、行うことによって乳がん死を20%減らすことができると言われているが、もうひとつ、超音波の検診を行うかということが問題となっている。そこで超音波の有効性について大規模調査(J-START)が行われた。7万4千人くらいを対象に、マンモ+エコーのグループとマンモのみに分け、第1回目の研究結果では乳がん発見率が、マンモ+エコーの方がマンモ単独より発見率が1.5倍であった。ただ、よく見つかるというだけではだめで、これを行って死亡減少につながるのかどうかというところまでみなくてはいけない。マンモ+エコー検診の死亡率減少効果を検証する時期に来ているが、それにはあと10〜15年かかる。そのため、対策型検診(自治体が行う検診)には時期尚早である。
検診は対策型検診(住民検診型)と任意型検診(人間ドック型)に分かれているので、どの検診を受けるのか受診者が考えて受けることであろう。
 最新の乳がん治療について。T期〜W期まで全期を合わせた生存率は80.7%で、乳がんは非常に治りやすい。ただ乳がんになった患者さんの20%が10年以内に亡くなるという現実もある。なぜ手術をして、転移巣もないのに亡くなる方がいるのか。治療開始時に全身に潜在するがん細胞が存在し、これが大きくなって生命予後に関係する。ということで、手術で病巣を取っただけではなく、全身に潜在するがん細胞をコントロールするためには全身療法が必要である。乳がん治療における生命予後に関する重みは、局所療法(手術、放射線治療)より、全身療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的薬)の方が重要である。そのため、なるべく手術は小さくし、全身療法を進歩させ乳がん細胞をやっつけて生存率を高めようという形になる。そういう中で乳房温存術が出てきた。さらに「見張りリンパ節」(センチネルリンパ節)を取って調べ、がん細胞が見つからなければ、これからさきのリンパ節にはがんがないだろうと考えられるので、リンパ節をすべて取る(郭清)しなくともすむ。また、乳房全摘後の乳房再建も積極的にするという方向に変わってきた。乳房再建の方法は、自家組織による再建(再建方法自分のおなかや背中の組織を使う)ものと、インプラントによる再建(シリコン製の人工乳房を使う)があり、メリット、デメリットとして自家組織の場合、・やわらかく、温かい、・腹部や背中が痛み、傷が残る、・体への負担が大きく、社会復帰に時間がかかる、・年齢と共に変化する、インプラントは・やや硬く、冷たい感じ、・乳房以外に傷ができない、・体への負担が少なく、社会復帰が早い、・年齢と共に、片方の乳房と差が出る、などがあげられる。乳がんの手術も、個別化、最適化され、乳がんのステージ、広がり、サブタイプなどによって、乳房温存術や術前化学療法、乳房切除術±再建などを行う。そして温存手術後には放射線治療を行う。以前は乳がんのステージ(病期)で治療法を決定していたが、乳がんではがん組織の中のがん増殖に関わる以下の蛋白(•エストロゲンレセプター、•プロゲステロンレセプター、•HER2、•Ki-67(MIB 1))の量を免疫組織染色で、ルミナールA、ルミナールB、ルミナールHER2、トリプルネガティブ、HER2タイプという5タイプに分類し、それぞれ治療法が異なる。ホルモン療法は、エストロゲンの分泌と働きを抑える療法。エストロゲンによって乳がんが増殖するタイプ(乳がんの約70%)に有効で治療期間が長いのが特徴。
化学療法(抗がん剤療法)は、がん細胞に直接作用することで、細胞のDNAやタンパク質の働きを阻害して、がん細胞を死滅させる薬物療法。一定期間、1〜4週間ごとに、単体あるいは2〜3種類の薬を組み合わせて、点滴。投与前に吐き気止めの薬も投与される。抗HER2療法は、HER2タンパクを多く持っている乳がんに対して行われる。3週間に1回の点滴を、約1年間継続する。乳がん薬物療法は進歩しており、術後1〜3年の再発率が低下している。また2017年12月に使用出来るようになった薬剤として、CDK阻害薬が出てきており、ホルモンレセプター陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに適応となっている。さらに免疫チェックポイント阻害剤も乳がんに使われるということで今研究されて、近々使えるのではないかといわれている。がん細胞は免疫細胞によって排除される。ところが、がん細胞は、この免疫細胞の働きにブレーキをかける仕組みを持っていることが分かった。そこでこのブレーキを働かなくするのが、免疫チェックポイント阻害薬である。しかし、CDK阻害薬も免疫チェックポイント阻害剤も非常に高価な薬で、このままでは保険財政が破たんするだろうと言われている。緒方洪庵がベルリン大学フーフェランド教授の本を翻訳し、「扶氏医戒之略(ふしいかいのりゃく)」12ヵ条というものを書いているが、その中で「病者の費用少なからんことを思うべし。命を与うとも、その命を繋ぐの資を奪わば、また何の益かあらん。」医療費はできるだけ少なくすることに注意するべきである。たとえ命を救いえても生活費に困るようでは、患者のためにならない。ということを記している。すくなくともがん治療においては、こういうことを真剣に考えなくてはいけない時代に来ている。
 私たちの目指すがん治療とは。私たちは標準治療を行っている。標準治療とは、科学的根拠に基づいて証明された治療を行うということ。ただ、科学的根拠が絶対ではなく、そこには当然患者さんの価値観や希望、医療者の技量、医療資源というものもある。こういうものをすべて統合するが、あくまで一番基本となるのは科学的根拠である。それに対してもう一つの考え方として、患者の物語Narrative Based Medicine(物語りと対話に基づく医療療)、病気に対する、医療療に対する、病気を持って生きてゆく人生に対する、患者自身の考え、価値観がある。そこには、EBMとは違うもうひとつの真実がある。この二つを心して常に医療にあたっていかなければならないと考えている。医療の提供する側と受ける側の関係性に関する概念として、説明と同意(informed consent)を経て患者さんの価値観を強く意識し、情報に基づいて患者さん自身が選択する方法が出てきて、今は共有意思決定(shared decision making)といって、医療者と患者さんが共同して決定しましょうということに進んできている。その中で、個人的にはピンクリボン運動に関与してきた。ピンクリボンは「気づき」と「行動」の世界共通のシンボルマークで、乳房健康研究会が行うピンクリボン運動の目標は、乳がんでなくなる人を1人でも減らし、乳がんになった人にやさしい社会を作ることであり、乳房健康研究会が行うピンクリボン運動の使命は、•乳がんについての正しい知識を広める、•早期発見の啓発活動、•乳がん医療・研究の助成、•新しい医療の普及活動、•乳がん患者、家族の支援、•政策立案者・実行者への働きかけである。
今、日本中でピンクリボン活動を様々な方にしていただいている。我々も、単に告知運動をしてもあるいは本を書くだけでは我々の考えは浸透しない、検診受診率の向上はしない、ということで、ボランティアの心と正しい医学的知己を持ち、お隣の人へ働きかけてくれる人をたくさん作ったら、日本の医療も変わるのではないかと「ピンクリボンアドバイザー」を作った。
乳がんは多様性を持つ疾患で、なおかつ、5〜10年の治療の間に多様性が変化していく。こういうことを客観的に理解できて、新しいボランティア運動につなげていかれる人を作りたいという思いで頑張っている。試験を受け、初級から経験を積んで、中級、上級をとっていただくというシステムをとっている。今1万人くらいの人にアドバイザーになっていただいたが、社会を動かすのはまだまだ足りないということで、増やすということを今やっている。
本日お伝えしたことは、乳がん医療、乳がんの考え方の変化、検診、診断、治療などの進歩により万人向け医療から個別化医療、最適医療へ向かっている、こういう中でエビデンスに基づいた治療、患者さんの物語に基づいた医療、そういう医療を患者さんとともに同じ目線で、意思決定を共有しながら進んで行っているとご理解いただければ、本日のお話したことがお伝えできたと思う。ご静聴ありがとうございました。
【質疑応答】
Q1:乳がん検診で、マンモグラフィと超音波で発見すると聞いたが、MRIというのは乳がんと診断されてからするのか、マンモグラフィと超音波とMRIの関係や重要性についてお聞きしたい。

A1:MRIは診断がついて、患者さんにどんな治療を行うかというときに通常用いる。MRIは一番精度が高い乳がんの画像診断法と言われている。ただ、高い検査なので、通常検診では行わないが、乳がんのなかで、5〜10%が遺伝性乳がん・卵巣がん症候群と言われていて、こういうリスクの高い人はMRIが一番いいと考えられている。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の人は遺伝子の変化を治す力が弱く、マンモグラフィは放射線なので、もしかしたら遺伝子変化が起こるかもしれないので、そういう人には少し高いがMRIを使うというように使い分けをしている。

Q2:病院で自己受診しMRIを受けた場合、MRIとマンモグラフィ、エコーの診断はどちらが重要な診断になるのか。

A2:なかなか難しい質問だが、通常検診でも診断でも、マンモグラフィと超音波を基本でやっている。病院にいらしたときはマンモグラフィと超音波を行い、気になる時はMRIを行うが、当然そこに差が出てくる。どちらを信用するかはとても悩むが、MRIは感度が高いのでいろいろなものが見つかってくる可能性が高い。そこで、気になるところをもう一度超音波を行い、それでも気になるところがないという場合は、MRIは少し陽性だが少し様子をみようということだったり、逆にマンモグラフィや超音波で問題のないところにMRIが問題を指摘して、実はこういうところにしこりっぽいものがあるというのが分かることもある。そういうわけで、我々はいつくかの画像診断を統合してやっている。

Q3:良性の疾患があるとがんになりやすいのか、また放射線を胸にあてているとリスクはあるのか。

A3:きわめて目立つ乳腺症がある場合はリスクが高いことが分かっている。小さい頃たくさんレントゲンを撮ったとか、放射線治療を行った人はリスクが高い。放射線は遺伝子にダメージを起こすので、ダメージを起こした細胞が異常な動きをし、がんに変わっていくという可能性はある。
20代、30代の頃は乳腺が活発な時期なので、そこに被曝すると遺伝子変化を起こしやすいので、あまりマンモグラフィはやって欲しくない。40代以降はマンモグラフィによる被ばくによってがんになるリスクは少しあるが、マンモグラフィによる被ばくと、マンモグラフィ検診を受けたことによる救命効果を比較すると、圧倒的に命を救う効果が大きくなる。

Q4:先生方はいろいろな例告知の場面をみておられると思うが、治療の決断をするまでをフォローする臨床心理士やカウンセラーのような専門職の方々の育成はどうなっているのか。

A4:臨床心理士は非常に重要であるが、臨床の場ではふんだんにいるわけではないし、雇い入れている組織もなかなかない現状である。私たちは必要なら臨床心理士に介入いただいている。ただ、医師並びに看護師、特に看護師が重要である。いかに看護師と信頼関係を確立していくかということだと思う。先ほどお話した、共有意思決定(shared decision making)が目標と言ったのはそういうことで、同じ目線で、情報を聞いてやり取りして、お互いに物語があるわけだから、それで意思決定をするのが一番重要である。それが一番時間がかかる。また何人かの看護師が主治医のように話をお聞きする体制を作らないと無理である。また、妊孕性の問題では臨床心理士を交えて行ったりするが、ただ、日本の状況は厳しく、多くの人をカバーすることは難しい。

Q5:2人乳がんの手術をした人がいて、1人は乳房全摘をしたあと薬も放射線も行っていない。もう1人の人はステージ1で部分切除だが放射線治療を行っている。その違いは何か。

A5:全摘というのは、がんが乳房のかなりのところに進展しているから摘出するが、乳房のなかのかなりの部分に広がっているというのは、決して進行したがんばかりではない。非浸潤がんで超早期のがんでも乳房全体に広がっていることもある。その場合全摘となる。ただ、超早期の場合転移している可能性は低いので薬は使わなくてもいい。がんの広がりや性格で大きく取る、小さく取るということをしているので、小さくても性格が悪いのは抗がん剤をがっちりやらなくてはならないということもある。単に大きさだけではなくがんの性格によって治療が変わってくる。
講演の様子
相模原市医師会長 竹村克二氏

開会あいさつ:相模原市医師会長竹村克二氏

講師:福田 護 氏

講師:福田護先生

会場の様子

会場の様子

全国巡回がんセミナー

平成28年度 「全国巡回がんセミナー」は終了いたしました。

ご参加ありがとうございました。

概要は以下のとおりでした。

「がん」は、生涯のうちに2人に1人が罹り、3人に1人ががんで亡くなるという時代を迎えています。
神奈川県では年間5万3,000人が新たにがんにかかっています。一方で、医療技術の進歩により、がんはもはや治らない病気ではなくなりつつあります。しかし、そのためには、「早期発見」「早期治療」が何よりも大切です。本セミナーは、県民の皆様にがんのことを正しく知っていただき、がん検診をうけていただくよう行動を起こしていただき、受診率の向上、がんの克服を図ることを目的としております。
本セミナー主催は、公益財団法人日本対がん協会と日本対がん協会神奈川県支部(かながわ健康財団がん対策推進本部)、神奈川県の共催で行いました。

全国巡回がんセミナー

日時:平成28年12月17日(土) 13:30〜16:00 (開場12:30)
会場:神奈川県総合医療会館 7階講堂

講演1:垣添 忠生氏
((公財)日本対がん協会会長、元国立がん研究センター総長)

講演2:鳥塚 しげき 氏 (ザ・ワイルドワンズ)
(写真は鳥塚しげき氏)
内 容:【講演1】「わが国のがん対策に占める検診の重要性」
講 師:垣添 忠生氏 (公財)日本対がん協会会長、元国立がんセンター総長
講演の内容については、わが国のがん対策に占める検診の重要性をテーマに「がんとはどういう病気か」「がん検診」「わが国のがん対策」の柱で説明いただきました。

がんは1956年から死亡率の第1位を占め、年々増え続けており、そのうちでも高齢者が多く、がんによる死亡率の増加は全世界の課題となっています。
がんは、遺伝子の異常により発生し、その原因として、たばこ30%、食事35%、感染症・ウイルス・細菌によるものが10%、遺伝は5%程度であること、日本人のがんの経年変化は、胃がん・子宮がんは少しずつ減少しているが、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんは増えており、生活習慣や生活環境との関連が大きいと話されました。
世界のがん対策として、たばこ対策やワクチン接種など予防できるがんは予防する、早期発見できるがんは検診を行い、がん診療はしっかり行い、治せないがんには緩和医療特に、疼痛緩和は特に重要であると話されました。
また、がんは発生しても初期は何の症状もないことから、がんが発生し何年かの時間があり、この無症状の時期に簡単な方法で、検診で介入し検出可能の段階で早期発見、早期治療をおこない、がんになっても死なないというのが検診の一番の目標であると力説されていました。
1960年に胃がんの巡回検診が始まり、その後、1962年には子宮がんが開始。その後、胃がん・子宮がん検診に国庫補助がなされたものの、1998年に補助金が廃止され、地方交付税に基づき、市町村が自ら計画、立案する事業に位置づけられました。対象臓器は胃がん、子宮頚がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5つです。
しかし、日本の検診の受診率は、諸外国に比べ低い状況にあり、乳がん検診では、日本は20.2%(2004年調査)米国65%(1995年)、子宮頚がんでは日本23.7%、米国82.6%(2006年データ)となっています。
ワクチンでの予防や早期発見の方法があるのに大変残念なことですと話されました。
わが国のがん医療に対する患者・家族・国民の要望として地域間格差の解消、医療機関間格差の解消、情報格差の解消があげられています。
がん対策基本法案の中の第1条に国・地方公共団体・医療保険者等の責務が明らかにされ、国民の責務として、生活習慣に関する正しい知識やがん検診受診のことが謳われています。がん対策推進基本計画についても、「がんの死亡者の減少」「すべてのがん患者・家族のQOLの向上」に向け重点的に取り組むべき課題も示されています。
かながわのがん対策はこれでよいのか、がん患者を孤立させない、安心しながら働き続けられるなど、がんになる前の生活と同じようにできることが望まれる。最後に、目指す方向に向かって正しい情報・正しい判断が重要であるとお話がありました。
内 容:【講話2】「胃がんになって」
講 師:鳥塚しげき氏 ザ・ワイルドワンズ
司会者から紹介を受けた鳥塚氏は、ヒット曲をホールいっぱいの音量で活力のある歌声で登場し、1曲を歌い終えての講演になりました。
鳥塚さんは1947年生まれ、1966年立教大学在学中にザ・ワイルドワンズでデビューされ、現在、結成50周年記念コンサートを真っただ中とのこと。
鳥塚さんは2002年55歳の時、胃がんになりました。
定期的に受診しているクリニックで腫瘍マーカーの検査を受け、値が正常より高いことから胃カメラを勧められ、試しにと胃の生検を行ったところ、早期の胃がんであることがわかりました。
当時、経過をみていた胆石も大きくなり併せて摘出が必要となったようです。
いよいよ手術を受けることが決まり、これまでにない不安や恐怖感を味わったことが話され、病院の婦長さんに励まされたりして心強かったことなど話されました。
手術は無事に終わり胃を4分の3切除されました。
術後は食欲がわかず、体重が日々減っていき、元に戻さないと声がでない、スタミナが足りないなど焦りを感じたそうです。
その後、徐々に回復した頃、19歳でプロとしてデビューし初めて病気として入院し休んだことで、思うことがあったそうです。
それは、「退院したらこれまでと違う自分・芯を持って生きないとだめだろうな」「1966年、思い出の渚がヒットし、レコードを買ってくれたり、コンサートにきてくれた。その方々に恩返しをしたい」「1960年代の歌を唄うことで、自分が元気づけられるのではないか」と思ったそうです。
そのためには、ウォーキングをしたり、声帯を鍛えなくてはいけない。手術のあとは、早く良くなろう、元気になろうと身体を動かし、元気な体に近づけようという強い気持が必要だと思うとはなされていました。また、自分のお兄様の胃がんの経験から、是非、セカンドオピニオンを受けることの必要性を話がされました。
鳥塚さんは現在、月1回の定期的な検査を受け、いつまでも元気でいられるのは、「食事」「楽しく笑って過ごす」「歌うこと」が大切なのではないかと思う、現在もカルチャーセンターで「皆で歌おう1960年代を」皆さんと歌っていると話されました。
最後に、ヒット曲「思い出の渚」を熱唱していただき、会場の皆様と共に一緒に歌い素敵な時間となりました。
講師:垣添 忠生氏

垣添 忠生氏

講師:鳥塚しげき氏

鳥塚しげき氏

会場の様子

会場の様子

過去開催 がん克服シンポジウム

第12回がん克服シンポジウムテーマは、「女性の健康とがん」
女性特有のがんへの向き合い方、早期発見、早期診断の大切さ、予防に向けた生活習慣づくり、最新の治療法など3つの講演を行いました。


日 時:平成29年2月11日(土) 14:00〜16:30
会 場:神奈川県民ホール小ホール
主 催:がん克服シンポジウム実行委員会
     [構成団体]
     神奈川県保健福祉局保健医療部 がん・疾病対策課
     公益社団法人神奈川県医師会
     公益社団法人神奈川県看護協会
     一般社団法人神奈川県歯科医師会
     公益社団法人神奈川県病院協会
     公益社団法人神奈川県薬剤師会
     公益財団法人かながわ健康財団(事務局)
     (順不同)
内 容:【講演1】守ってあげたい いのちを懸けて
講 師:参議院議員 三原じゅん子氏
9年前に子宮頚部の腺がんに罹患。がんは人間ドックで発見され、精密検査を重ね医師から診断名や病状、またいろいろな説明を受けられたこと、しかし、専門的すぎて理解しづらく、家に帰ってインターネットで調べてもネガティブなことしか書かれていなかったとのこと。
そこで、「自分の病気をもっと知りたい」と同じ病気の経験をしている人に今後の治療やその副作用、これから起こる可能性のことなどいろいろなことを聞かれました。
それらは、自分の病を知る、闘い方を知るうえで、どれほど力になったことか、今でもがんになってよかったことと言えば「がん友」ができたことだと話されました。
また、この人なら任せられると思える医師に出会うまで、セカンド・サードオピニオンを受け、「病を治すこと」と「自分らしく生き続けること」のどちらを選択するのかではなく、「治療しながらでも、自分が自分らしく生き続ける選択肢を許してくれた医師」と出会い、がんとつきあっていく、むきあっていく大変さ、難しさを覚悟しなければいけないことを知ったと話されました。
現在、社会復帰ができ、普通の生活ができることに感謝しつつ、わが国でがんと闘っている方、付き合っている方がどのような課題があるのか、埋もれているのかを知るために患者会や家族会の方々と会い、がん対策・がん撲滅のために何が必要かと勉強会を開きました。その結果「日本のがん対策は進んではいない」「誰かがやってくれるまで待っているのでは変わらない」と思い、自分が再発や転移のリスクを背負っているのであれば、自分が取り組むべきことではないかと、芸能界を引退してでもやるべきことであると考え、政界入りするきっかけや決意について話されました。
平成18年にがん対策基本法が出され、その改正案が、平成28年の先の国会で成立しました。それは、患者会の皆様の熱心な取り組みの賜物であり、がん患者への差別や雇用・生活の支援、がん教育への取り組みなどがん対策基本法改正の内容を、患者の視点に立ち、自分のこころに刻みつけて仕事させていただいていると話されました。また、女性の健康という視点から発信をしていきたいと政治家としてのたいへん迫力のある講演でした。
内 容:【講話2】知っていますか?子宮がんのこと、卵巣がんのこと
講 師:独立行政法人地域医療機能推進機構 相模野病院 婦人科診療顧問
    北里大学医学部客員教授  上坊敏子氏
子宮頸がんは20代から増え30歳代をピークとして若年層で増加している。
これは日本の妊娠・出産年齢と重なり、頸がんはいのちだけでなく、妊娠にも大きな影響を与えている。原因はヒトパピローマウイルス(HPV)であるが、これは性交経験のある女性の80%が一生に一度は感染している。しかし、1・2年で90%が自然に消失する。感染が持続すると、がんに進行することがある。感染からがんになるまでには数年から10年以上かかる。
子宮頸がんはワクチンと検診で予防できる唯一のがんである。世界各国の子宮頸がんの検診受診率をみると、2013年の調査ではアメリカは84.5%、世界の平均は61.6%、日本は42.1%と50%を目標にしているが達成していない。都道府県別の受診率では、神奈川県は全国平均より若干良い位である。検診開始年齢は20歳から対象にしており、検診間隔は2年に1回となっている。是非受けてほしいと話されました。
ワクチン接種については、150種類以上のHPVのうち16型・18型HPVに有効であり、すべての型は予防できないため、ワクチンを接種しても、検診は必要であることの説明がありました。
子宮頸がんは原因がはっきりしていることから、ご理解いただき頸がんで苦しまないで欲しいと話されました。

子宮体がんは8割が女性ホルモンのエストロゲンが関係しているといわれ、50代を中心に罹患数、死亡数ともに急増している。
しかし、早期段階から重要な症状として「不正性器出血」がある。その他、黄色帯下、腹痛、腹部膨満感、全く症状のない人は5~10%程度である。該当する症状があればすぐ受診してほしいと強調されました。
子宮体がんを予防する、あるいは効果が認められているのは経口避妊薬、ホルモン補充療法、野菜・新鮮な果物・運動などがある。

卵巣がんは典型的な症状も確実な検査法もなく、受診が遅れがちになる。50  代から60代がピークで腹部に違和感があれば早めに婦人科を受診することが大切とのこと。卵巣がんは、上皮性腫瘍、胚細胞腫瘍、性索間質性腫瘍があるが、上皮性腫瘍が多く、その危険因子としては、加齢・未妊娠・排卵誘発剤使用などがあると話されました。
そして、また、日本の普及率は低いが、経口避妊薬は卵巣がんのリスクを下げ予防の効果は高く、効果は大きいと話されました。
内 容:【講演3】女性のがんとリンパ浮腫
講 師:神奈川県立がんセンター緩和ケア認定看護師 山本 香奈恵氏
リンパ浮腫は主に乳がんや婦人科のがんである子宮頸がん・体がん、卵巣がんなどの手術でリンパ節郭清をした場合に起こすことがある浮腫と言われている。
 頻度はリンパ節郭清をした約1割の方(10人に1人位)に発生する。問題になることとして治りにくい、治らないのが現状である。男性でも前立腺がんや膀胱がんの術後に起こることもあるが、女性のがんと比べると少ない。リンパ浮腫が起こると、がんの良い・悪いに関係なくがんが治った後でも、このリンパ浮腫が残ってしまうため、一生気をつけていただくことになる。リンパ浮腫とは、術後のリンパの輸送障害に高蛋白質の組織間駅が貯留した結果におこる臓器や組織の腫れによるもので、乳がんの場合、腋下のリンパ節郭清、婦人科がんの場合は骨盤内や鼠径部のリンパ節郭を行うため、腕(上肢)や下肢の浮腫が起こってくる。県立がんセンターの2015年度のリンパ浮腫相談外来では、患者908人中、約180人位の方に対応しており、診療報酬が認められている。
 リンパ浮腫のケアは、スキンケア、マッサージなどのリンパドレナージ、ストッキングや包帯での圧迫療法、運動療法があり、これらは医師の指示が必要となっている。
リンパ浮腫を予防するためには、力仕事を避けること(手術側の腕で重い物を持たない)や皮膚の清潔や保湿、皮膚を傷つけないことの日常生活での注意のポイントなどわかりやすく説明されていた。
また、予防的なケアとしてリンパの流れを良くするための、肩まわしの体操や呼吸法などの紹介がありました。
また、皮膚を傷つけると細菌感染をおこし、蜂か織炎の原因になったり、また炎症からリンパ浮腫を発症する方もあり、炎症を起こした際には早期の受診が必要であると話されました。

 最後に、予防法や対応法は是非試してほしい、また浮腫んだら早めに主治医に相談し、必要時、がんセンター相談室にご相談いただき、道筋を考えていきましょうと話されました。

三原じゅん子氏

出演者質疑応答

会場の様子

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