かながわ健康財団
がん対策

過去開催 がん予防市民公開講座

令和元年度

令和元年度のがん予防市民公開講座は、「子宮頸がんを知ろう」 をテーマに公益財団法人川崎市医師会(主催)、かわさき健康づくりセンターとの共催により、参議院議員 三原じゅん子氏ほかの講師の方をお招きして開催いたしました。
子宮頸がんを知ろう
【日 時】 令和2年1月25日(土) 14:00〜16:00

【場 所】 川崎市医師会 3階ホール

【講 演】
講演@「子宮頸がんはどんな病気」
新百合ヶ丘総合病院 がんセンター センター長
鈴木 光明 先生

講演A「子宮頸がんワクチンは今どうなっているの」
川崎市健康安全研究所 所長  岡部 信彦 先生

講演B「守ってあげたい いのちを懸けて」
参議院議員 三原 じゅん子 氏

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講演@ 「子宮頸がんはどんな病気」
講師:新百合ヶ丘総合病院 がんセンターセンター長 鈴木 光明 先生
 子宮は意外と小さく、鶏卵大の臓器である。毎年子宮頸がんで3,000人が亡くなっている。
 子宮頸がんの原因について、疫学調査したところ、遺伝的要素はなく、ほぼHPV(ヒトパピローマウィルス)感染が原因であることがわかってきた。
 HPVの種類は1種類ではなく、150種類以上あるが、そのすべてが子宮頸がんの原因になるわけではなく、そのうちの高リスク型のものが子宮頸がんを引き起こす。
 HPVは約80%の人が感染しており、ほとんどの人が一生のうちに一度は感染するが、とくに若年層の感染率が高く、そのうち1%が子宮頸がんとなる。
せかいにおける若年成人がん調査(20〜39歳)によると、罹患率1位は乳がん、2位は子宮頸がんであり、死亡1位は乳がん、4位が子宮頸がんで、日本では若い世代で子宮頸がんが造塊している。罹患ピークは30〜30代後半で、ちょうど出産のピークと重なる。
 妊娠中のがん罹患について調査したところ、頸がんは36%で、場合によっては妊娠の継続が難しいケースもある。子宮頸がんが早期に見つかって円錐切除術を行っても、不妊のリスクがあったり、広汎子宮全摘を行った場合にリンパ浮腫が起こったりするため、まずはがんの1予防として、ワクチンを、二次予防としてがん検診を行うことが非常に重要である。
講演A 「子宮頸がんワクチンは今どうなっているの」
講師:川崎市健康安全研究所 所長  岡部 信彦 先生
 予防接種の役割は、感染症にかからないようにすることである。その中でもがんを防ぐものとして、B型肝炎ワクチンや、ヒトパピローマワクチン(子宮頸がん等)がある。
 日本の予防接種制度は、予防接種法による定期接種があり、定期接種の費用は国や自治体が負担するものだが(一部で自己負担あり)、以前のような義務接種ではない。定期接種A類は多くの人に受けてもらうもので、勧奨の度合いが強く、定期接種B類は、肺炎球菌ワクチンなどの本人の希望が強いもので、勧奨の度合いが弱い。定期接種には、副反応報告制度(有害事象報告制度)、損害賠償制度(健康被害救済制度)が適用されるが、任意接種にはない。このうちヒトパピローマワクチンは、勧奨の度合いが強い定期接種A類である。
 ワクチンは、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類があり、HPVワクチンは、免疫に必要なたんぱく質を人工的に作った中身のない(DNAゲノムのない)外殻を模倣した人工的に作り出したワクチンである。
HPVワクチンは2009年に導入されたが、ご存じのように痛みが強い、それによって動きが悪い、意識障害が出る、行動異常が出るなどの症状がでたため、その原因が分かるまで接種を見合わせようと言う事になった。今現在積極的に接種してくださいということにはなっていないが、接種後に生じた症状に対する厚生労働省の救済制度がある。
 接種における様々な事象を受け、青少年における「疼痛または運動障害を中心とする多様な症状」の受領状況に関する全国疫学調査が行われ、このアンケート結果から、ワクチンを接種したから症状が出たというわけではなく、ワクチンを接種していない人にも同じような症状が出たことが分かった。また名古屋で実施された調査で、24の症状(月経異常、関節等の疼痛、激しい頭痛、疲労感、持久性の低下、視野障害、行動異常等)について、症状がある人にHPV接種後、未接種、接種と関連不明等についてアンケート調査を行ったところ、接種、未接種どちらもほぼ同じような症状がでており、この年齢層ではこういう症状が出ることが多いことが分かった。
 新潟県や、宮城県の調査でもワクチン接種による感染の低下が報告されている。
 ワクチンを接種したことでストレスがかかり、いろいろな反応が出ることがわかってきた。ワクチンが悪いのではなく、接種する前に心配したり、痛かったらどうしよう、効かなかったらどうしようなど、ワクチンを接種することがストレスになる。急性反応は、その痛みが引けばすぐ収まるが、身体的、心理的、社会的不安があると症状が長引く。ワクチンを接種する場合は、丁寧な説明・実施が必要である。もし反応が起きたときは科学的、医学的にどんな状況か説明する必要がある。WHOは、ワクチンの液が問題になる場合もあるが、ストレスなどの要因で起こることがあるので、対策をきちんととってワクチン接種をしましょうということをやり始めた。病気を予防する必要性がすごく高いか副反応に十分注意しながら摂取する。しかし本当にその副反応がワクチンのせいだったら、それは一時取りやめてもきちんとした方向にすすめなければならない。そのような事を考えながら行うのが予防接種である。このワクチンが必要かどうかは、これから議論を重ねご意見をいただければと思っている。
講演B 「守ってあげたい いのちを懸けて」
講師:参議院議員  三原 じゅん子 氏
 今回は、政治家の立場として、そしてサバイバーの立場としてお話したい。
 サバイバーとして社会復帰したときに、こんな思いを若い女の子たちにさせてはいけないと思った。その時にはがんを克服した仲間たち、また闘病中の仲間、がん友や、患者会の方々と一緒に「検診を受けましょう」という活動をしていた。その時にHPVワクチンが承認されることになった。がんが予防できる、すごいことだと思い、接種勧奨活動に力を入れていった。当初このワクチンは3回打たなければならならず、高額であったため、経済的な格差がワクチン接種の有無に直結しかねない、ワクチンを接種したいと思った方が経済的な負担があるがゆえに接種できないというような状況はつくるべきではない、みんなが平等に接種できるようにならなければならないと考え、誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分が議員となって国会の中で汗をかいていこうと思ったことが議員となったきっかけだった。そのときとある産婦人科の先生から、HPVワクチンのことで選挙戦を戦おうということなら、誰に何を聞かれても答えられるようにしっかり勉強するように言われた。医療にかかわったこともなかったが、いろいろな事を勉強し選挙戦を戦わせていただいて当選し、HPVワクチンが定期接種となることを果たした。その矢先に、多様な症状を発症した少女たちの画像がTVや動画で流れてきて、自分が推奨してきたワクチンがこのようなことを起こしたのかと、様々な研証を行ってきたが、厚生労働省も積極的な接種をすすめるということをいったん差し控えるということになった。これだけたくさんの方々がこのような症状を起こしてしまうのなら、まずその方たちを治療しし治してあげる事、と同時にこのワクチンが危険なのか安全なのかそうした科学的な検証待たなければならないと感じた。そして様々な研証が行われて7年になろうとしている。この7年間様々な研証が行われ、はっきりしてきたことがあるが、厚生労働省は積極的な接種勧奨を差し控えただけでまったく動こうとしない。その間、世界中では接種が進み、子宮頸がんの前がん状態が減少しているという検証が出てきている。思春期の子どもが痛い注射を受けて失神した事例や、接種後痛い、腫れたなども副反応に含まれてしまった。本来副反応と言うのはワクチンと直接因果間があるものを副反応といい、それ以外のものを有害事象という。それをすべて副反応に含めてしまったため、副反応の数が多くなってしまった。ワクチンの副反応に関する研究結果は、なかなかマスコミに取り上げられない。7年間ワクチンを受けてない人がたくさんいる。今世界では9値ワクチンが主流になっているが、まだ日本では承認されていない。また接種先進国では男の子が接種しているというのが当たり前になっている。HPVは子宮頸がんだけではなく、中咽頭がんや他のがんも防げるワクチンである。だから、正しい情報を知って、接種するかどうかの判断し、納得の上自分たちでして欲しいと思う。積極的に接種を差し控えるというのをやめて、定期接種として行ってほしい。そして有害事象、副反応を起こされた方には手厚く、安心して病気にならないように、みんなで検診を、そういうことを考えるいい機会ととらえていただければと思う。
質疑応答
Q1.姉が検診で子宮体がん・肉腫と診断されたが、子宮頸がんと子宮体がんは別物なのか。
A1.鈴木先生:別物である。原因が違う。子宮体部にできるのはおそらく腺がんと思われるが、肉腫といわれたならば、もしかしたら混合型の子宮体がんなのかなと思っている。

Q2.子宮頸がんワクチンは抗体期間が15年くらいだと思うが、小学校6年から高校3年の間に3接種する中で、4回目の追加接種を打った方がいいのではないかと言われているがどうか。
A2.岡部先生:3回接種ではなく、2回接種で十分であるというデータが出てきている。ただ、開発して30年も40年も経っているわけではないので、その間のデータはエビデンスがないが、現在の状況で、小さいこの場合は、2回接種で大人まで大丈夫であるというデータがある。

Q3.7年間ワクチン接種が開いた期間があるが、レトロスペクティブにデータをとることは可能か。
A3.それは、今日お見せした接種した方と接種していない方のデータで、前がん状態の1,2,3のかなり高度な部分まで抑えることができている。

Q4.中2の娘がいて、いま積極的に推奨していないので接種を迷っている。また筋肉注射がすごく痛いというので、自分が受けたことがないのに、どのように接種について説明したらよいのか。
また、2価と4価どちらを打てばよいのか。
A4. 岡部先生:2価の方でほとんどカバーができているが、4価ならばそれよりちょっと上がり、9価ならばさらにカバー範囲が上がる。数が多い方がいいが、子宮頸がんという病気だけを目標にするなら2価でも相当な効果がある。2価と4価のワクチンどちらを取り揃えているのは医療機関によるので問い合わせてほしい。また痛みについては、自分で打ってみた感じでは、臀部等に打つ抗生物質の注射と同等程度であった。ただ、このワクチンを皮下注射とか皮内注射にするともっと痛いと思う。筋肉注射だから痛いのではなく、痛い注射だから筋肉注射で行っている。また筋肉注射の方がより免疫の効果がいい。今の子どもたちは痛みの経験が少なく、初めての経験でみんなが痛いと言うと不安になると思うが、それは一時で収まるし、もしあまりに痛かったらこことここの先生に行ってみてもらうというのが分かっていればずいぶん違うと思う。子どもに「痛いけれども子宮頸がんになるよりいいよね」というような話ができればいいと思う。
 三原氏:友人でもがんで亡くなったり苦しんだりしている人がいる。その苦しみを考えると、今一瞬の痛みを我慢すればいいのかなと思う。

Q5.上の娘はワクチン接種したが、下の娘の時に様々な報道があったため、接種を迷っている。たまたま行った病院で接種について聞いたところ、もし自分に娘がいれば実費でも受けさせると言われたので、下の娘も接種した。一般人は、なかなか正しい情報を得られていない。
A5.三原氏:お母さんが、かかりつけ医を持って、相談できるようになっていれば、こういう時に娘さんも一緒に行って聞くことができる。
講座の様子
講師:鈴木光明 先生

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講師:岡部信彦 先生

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講師:三原じゅん子 氏

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平成30年度

平成30年度のがん予防市民公開講座は、かかる人が増加している「前立腺がん」について、厚木市民病院 副院長の鈴木 正泰 先生をお招きして開催いたしました。
もっと知りたい!前立腺がんのこと
【日 時】 平成31年2月3日(日) 14:00〜15:30

【会 場】 レンブラントホテル厚木 相模

【講 師】 厚木市立病院 副院長兼泌尿器科部長
      鈴木 正泰 先生

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講演内容
 前立腺は、男性にしかないもので、骨盤の一番下にあり、くるみ大の臓器である。
 前立腺の中でも、三つの部位(中心域、移行域、辺縁域)に分かれ、そのうち95%は辺縁域にがんができる。
 前立腺の働きとしては、精液の一部となる前立腺液の分泌があげられ、主に精子の運動、保護に関与しており、男性ホルモンに依存する臓器である。
 日本人男性がかかるがんのうち、前立腺がんは2000年くらいから急激に増加し、最新の統計では、胃がんに続き第2位の罹患率である。死亡率についてはゆるやかに上昇している。罹患率と死亡率を比較すると、罹患率と死亡率の間にはかなり大きな乖離がある。
 前立腺がんのリスク因子としては、人種、食生活、年齢、家族歴がある。人種については、欧米の黒人に前立腺がんが多く、日本人は少ない。しかし、ロサンジェルスの日系人については、罹患率が高いため、人種だけではなく、食生活も関係があると考えられる。欧米人は穀類や豆類の摂取が少なく、肉や油の多い食生活であるためではないかと考えられる。
 また、年齢が高くなるほど前立腺がんの罹患率が高く、家族に前立腺がんがいる場合、いない人と比較して、リスクが高くなる。したがって日本で前立腺がんが増加している理由は、高齢化社会、食生活など生活習慣の欧米化がある。しかし、前立腺がんのリスク因子としての「人種、食生活、年齢、家族歴」について、食生活以外でリスクを下げることは難しい。
 厚木市では、前立腺がん検診を平成16年より取り入れており、対象は50歳以上の男性、方法はPSA測定で行っている。日本では、前立腺がん検診は、死亡率を下げるという根拠は不十分とされ、対策型検診としては勧められていないが、ヨーロッパでの大規模、長期間研究で進行前立腺がん罹患率の低下が確認されている。5年のスパンでみるとPSA検診の効果ははっきりしないが、10〜15年すると効果が見られるという検診である。厚木市での検診の現状だが、50歳以上の検診該当者の数に対して、実際に受けた人の割合をみると、17〜18%と低い。厚木医師会の医師をはじめ啓蒙に努めているが、受診率を上げる必要がある。検診でどのくらいがんが見つかるかというと、検診の初年度は検診で初めて見つかった人が非常に多かった。しかし、検診を行って、要精検となった人のうち、実際に精検受けた人は20%程度である。これも非常に残念なことでもう少しあげたい。

 前立腺がん診断の流れとしては、一次検診として採血し、PSA値を測定する。(PSA値の基準値4.0ng/mL)。次に二次検診または保険診療として、PSA(再)検査・直腸診・超音波検査を行い、さらに確定診断(精密検査)として前立腺針生検を行い、前立腺がんとの診断がされると、前立腺がんの進み具合の検査として、ステージ診断のためのMRI/CT、骨シンチを行う。
 各検査実際について、経腸的超音波検査は直腸から超音波を当てて診る。MRIは局所の状態を見るために行うこともあるし、転移の状態を調べるために見る場合もある。超音波やMRIで確定診断をしたほうがいい場合に、経直腸的前立腺針生検を行い、少なくとも8か所、多くて14か所、大体の施設で10〜12か所取る施設が多い。採取時の痛みについて、昔は半身麻酔下で実施したが、今は多くの場合粘膜麻酔だけで生検を実施しているところが多い。
 生検で前立腺がんと診断された場合は、病期診断としてCTや全身骨シンチグラフィーを行う。
 前立腺がんの転移は骨やリンパ節に多い。転移をする前立腺がんの80%は骨に転移するため、アイソトープを注射し、骨シンチグラフィーで撮影する。

前立腺がんの病期(ステージ)分類は
T1限局癌(偶発癌) ステージT期 ABCD分類でA
T2限局癌 ステージU期 ABCD分類でB
T3局所浸潤癌 ステージU期 ABCD分類でC
T4周囲臓器浸潤癌 ステージW期 ABCD分類でC
N1リンパ節、M1骨などの遠隔臓器 ステージ W期 ABCD分類でD となる。
前立腺がんの転移部位としては、骨が85.8%、リンパ節38.4%、肺5.1%、肝1.6%、その他0.9%となる。

・限局性前立腺がんの治療法について。
この場合は完治が望める。偶発・触知不能がんT1はPSA監視療法といって、すぐには治療せずに経過観察する方法か手術療法、放射線療法、内分泌療法を行い、限局がんT2の場合は手術療法、放射線療法、内分泌療法を行う。
進行性前立腺がんの治療法について。局所浸潤がんT3の場合は、内分泌療法+放射線療法、または内分泌療法+手術療法、あるいは内分泌療法のみを行い、周囲臓器浸潤がんT4並びに転移がんN1 M1は内分泌療法を行う。最近は局所浸潤がんについては、完治する率が高くなってきている。

・限局性前立腺がんの手術療法について。
前立腺全摘術はもっとも根治性の高い治療法である。
 余命が10年以上、前立腺肥大症の治療中やPSA検査で偶然に見つかった場合か、がんが前立腺からはみ出していない場合に適応となる。摘出部位としては前立腺並びに精嚢を摘出する。手術は、下腹部切開(メリット:リンパ節を同時に切除できる、広い範囲の切除も可能、3〜4時間前後で可能、デメリット:術中出血量が多い、入院期間が長い、手技がやや難しい)、内視鏡(メリット:傷が小さい、術後の痛みが少ない、回復が早い、出血が少ない、デメリット:手術の時間がかかる、手技がやや難しい)、ロボット(ダ・ヴィンチ)による摘出(メリット:リ手術操作が楽、吻合や神経の温存、血管の処理に有利、出血が少ない、手術時間の短縮可能、デメリット:術導入されている施設が少ない、癒着や出血の多い患者には施行できない、費用が高い(2012年より保険適用、ランニングコストも高い))

・放射線療法について。
X線照射(メリット:治療台の上で寝ているだけで治療が完了、負担が少ない、尿失禁などの副作用が少ない、デメリット:治療期間が長期にわたる、治療後半年以降に副作用が出ることがある)。粒子線療法(メリット:照射時間が短い、他の臓器への影響が少ない、デメリット:高額、施設が限られる)がある。その他、放射線内照射といって、前立腺組織内に放射線同位元素を直接挿入し、内部から照射し治療する方法もある(メリット:合併症の発生が少ない、勃起機能が温存できる、尿失禁が起こりにくい、入院期間が比較的少ない、デメリット:手術や外照射法以上の効果は望めない、治療後半年以降に副作用が出ることがある)。低線量(一般的)と高線量がある。

・PSA監視療法
2〜3か月ごとにPSAを測定、直腸診や超音波検査を行う。PSA値が高くなる期間を算出し、再生検をし、高くなる期間が短かったり、再生検で悪化している場合は治療を開始する。
なお、進行したがんでもすぐには体に悪さをしないがんで様子を見て、悪さをするようだったらホルモン療法をしましょうというのが待機療法。

・内分泌療法
内分泌療法には、男性ホルモンの分泌を抑える方法と、男性ホルモンの作用を抑える方法があり、外科的去勢として、手術で精巣をとるもの、化学的去勢として、・性腺刺激ホルモン放出ホルモン拮抗薬注射、・性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬を注射、・抗男性ホルモン剤内服、・女性ホルモン剤内服(これは現在標準ではなくなっている)がある。内分泌療法の主な副作用として、性機能障害、ほてり、骨粗しょう症などの副作用がみられることがある。

・化学療法
ホルモン剤が効かなくなると化学療法に移る。(去勢抵抗性前立腺がん)。ドセタキセルとカバジタキセルが用いられる。ドセタキセルによる治療は、静脈からの点滴によって投与する。3〜4週間ごとに繰り返すのが一般的で、主な副作用は吐き気や脱毛、むくみ、骨髄抑制など。従来去勢抵抗性前立腺がんになると治療手段がなかったが、最近は新しい薬(新規ホルモン剤:エンザルタミド、アビラテロン、新規抗がん剤:ドセタキセル、カバジタキセル、放射線内照射療法:演歌ラジウム223注射(骨転移がある人のみ))などがある。
 去勢抵抗性前立腺がんの場合、完治は難しいが、5年相対線損率はゆるやかに上がってきている。

・前立腺がんの予防について
◆メタボリック症候群や肥満の改善に努めましょう
◆高脂肪食、特に動物性脂肪の取り過ぎを避けましょう
◆魚をうまく取り入れた食事にしましょう
◆喫煙を控えましょう
◆野菜(特に大豆やトマト)を充分取りましょう
 これらは、科学的根拠として確立されたものではないが、予防効果が期待できる事として国内外の学会で推奨されているので、是非励行していただきたい。
 医療従事者また行政の方すべての望みは、平均寿命、健康寿命を延ばすことである。そして重要なのは、平均寿命、健康寿命の差を縮め、できるだけ健康で、病院の世話にならない時間を作りたい。前立腺がんの早期発見ができれば、少しは縮むのではないかと思うので、皆さんも自身のこととして考えてほしい。
質疑応答
Q1: 限局性前立腺がんの放射線内照射について、負担が少ないということだが、その負担は、肉体的、精神的、金銭的ということか。また副作用は毛が抜ける等か。
A1: すべてである。ただ、少し入院しなければならない。また副作用が少ないがある。しかし、外照射や手術に比べると、負担は少ない。ただし、高線量の内照射については、若干副作用が多くなるし経済的負担も若干多くなる。副作用は局所なので毛が抜けることはないが、時間がたってから、多くはないが放射線性膀胱炎が起こることがある。

Q2:父が80歳で、PSAが4.63で、白い点がぽつぽつある。今度生検をするかどうか決めましょうということになったが、父は「もういい」と言っている。年齢で進行具合は変わるのか。高齢ではあまり進行しないのか。
A2:年齢でがんの進行が遅くなるというのはあまりない。ただ、前立腺がんの場合、80歳以上になると、10年後を考えて治療することが多いが、前立腺がんの多くは進行がゆっくりしたものが多いので、かりにがんになっても10年後悪さをするまでに、80歳だと10年度90歳で平均余命を超えて予後を見通すことになるので、50歳、60歳のかたの治療をするということに比べてメリットがなくなるため、PSAが4点代だったら、場合によっては様子を見ることもある。定期的に血液検査をし、数年ごとにMRI検査をするという方もいる。ただ、日本の場合、国民皆保険制度というものがあって、経済的負担が少なく検査や治療ができるというメリットがある。そういう意味で、80歳以上でもご本人のご意向によっては、生検を受けて、かりにがんが見つかっても、そこで治療するかどうか、相談するのも手だと思う。50歳、60歳のかたに比べたら、80歳の方は全体に精検しなければいけないということではない。ご本人のご意向が一番大事だと思う。

Q3:生検について、たいへん出血しやすい場所だときいたが、血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は、服薬を止めなくても大丈夫なのか。
A3:以前は止めることが多かったが、今は血液をサラサラにする薬を止めることによる不都合の方を優先的に考えて、多くの施設で服用しながら生検をする方が多い。今、服用したままと、服用を止めた場合の合併症の差を調べているが、今のところ、服用したままでも出血がそれほど多くなるという根拠は出ていないので、多くの施設で服用しながら生検をする方が多い。

Q4:市の検診でPSA検査を2、3年前に行ったが、これは一般的にはどれくらいの間隔で受ければよいか。
A4:数値によって違う。70代後半で0.いくつであれば、3年か5年に1回、3〜4弱だったら70代後半だったら1年ごとにやったほうがいい。

Q5:2〜3年前から毎年検査をしているが、がんになったらどうなるのか聞かせてほしい。
A5:PSAは前立腺がんの特異的なマーカーではなく、前立腺がんでなくても高くなる方がいる。そのため、PSA値が高くなる、生検をする、ということによる心理的な負担がどうしてもあって、無視できないことだと承知している。80歳以上の人ならば、1年に1回程度PAS検査をして、心配なら精検をする。精検をしてがんが見つかっても、そのがんが悪さをしていなかったら、特に治療しないで様子を見て、待機的な治療法といって、悪さをしそうになったらホルモン療法をすることによって、数年は抑えることができるので、そういうふうな段取りをとることが多い。今前立腺の新しいマーカーが作られているので、そういったものが出来てくるともう少し間違いなくがんがあるということができるようになると思う。

Q6:腰の大手術(分離症と辷り症)を2回行っているが、その結果尿を出す力が弱くなっている。
筋肉によって弱まっているのか、手術によって弱まっているのか。
A6:背骨の病期の方は足の症状が出ると思う。それと同じ理由で膀胱が弱くなる。整形の先生によると、神経症状は落ち着いているという判断である。尿を出す力が弱まっているのは、手術のせいではなく、もともとの病気のためと思われる。筋肉を調整する神経も問題だと思うので、リハビリテーションで改善することもある。
講座の様子
厚木医師会会長 馬嶋順子 氏

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講師:鈴木正泰 先生

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会場の様子

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平成29年度

平成29年度のがん予防市民公開講座は、罹患率(かかる率)が急速に増加している「乳がん」について、乳がん治療の第一人者、福田護先生をお招きして開催いたしました。

今、知りたい!最新の乳がん検診、早期発見・治療
【日 時】 平成30年2月3日(土) 14:00〜15:30

【会 場】 相模原南メディカルセンター 2階 大会議室

【講 師】 聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック院長
      福田 護 先生

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講座内容
 従来は全員に同じ医療を行っていたが、今、医療は個別化医療と言われ、最適な医療のために検査を行い、グループ分けして、患者さんの個性にあった医療を行うようになってきている。
 既婚、未産、乳がんの27歳の女性のケースでは、まず組織診断をし、悪性度の高いがんのため、化学療法を行うことになったが、お子さんができなくなる(妊孕性の低下)可能性があるため、妊孕性を確保しなくてはならないし、若年で悪性度の高い乳がんの場合、遺伝性の可能性もあるので検査をするかどうかも考えなくてはならない。この方は凍結受精卵を保存する方法を選び、その後化学療法を行い、術後6年目に妊娠し、出産された。この方の場合、患者さんが一番いい医療を選択された。本日お伝えしたいことは、乳がん医療、乳がんの考え方の変化、検診、診断、治療などの進歩により、万人向けの医療から個別化医療、最適医療へ向かっているということである。
 最初に、乳がんの増加と一次予防だが、毎年9万人の方が乳がんにかかり、1万4千人の方が亡くなっている。生涯で乳がんにかかる人は11人に1人である。乳がんの社会的問題は、年齢別の罹患率(かかる率)が、1980年代に比べ、35歳〜60歳後半の増加が大変著しい。なおかつ、ピークが40歳後半並びに60歳代で働き盛りの年齢層に多いが、受診率が高くないというのが問題である。がんは自分の普通の細胞から発生する。そして異常な細胞の集団になった時に、その細胞は自律的に増殖し転移し発病する。なぜ異常な細胞になるかというと、遺伝子にタバコ、アルコール、紫外線、放射線、ウィルス、環境汚染等、さまざまな外的要因)で突然変異が起こるからである。
乳がんにかかるリスクで確実だと言われているのがアルコール、肥満(閉経後)、成人期の高身長(閉経後)であり、ほぼ確実なのが成人期の高身長(閉経前)、腹部肥満(閉経後)、出生時体重が重い(閉経前)、成人になってからの体重増加(閉経後)など。可能性ありが喫煙。また、初経が早い、閉経が遅いなどのリスクファクターに入っている。逆にリスクを下げるのが確実と言われているのが、授乳、ほぼ確実なのが身体活動(閉経後)、可能性ありが身体活動(閉経前)、大豆食品・イソフラボンの摂取である。ただこのリスクをなくすのは困難で、一次予防は難しい。したがって乳がんでは死なないためには二次予防、つまり乳がん検診である。乳がん検診の目的は、乳がんからの救命(乳がん死亡率の減少)であり乳がんを発見することではない。その他に早期発見をすることによって、1.機能温存やQOLの維持、2.乳房温存療療法の施行、3.腋窩リンパ節郭清の縮小、4.全身療法の軽減などが期待できる。マンモグラフィ検診は、行うことによって乳がん死を20%減らすことができると言われているが、もうひとつ、超音波の検診を行うかということが問題となっている。そこで超音波の有効性について大規模調査(J-START)が行われた。7万4千人くらいを対象に、マンモ+エコーのグループとマンモのみに分け、第1回目の研究結果では乳がん発見率が、マンモ+エコーの方がマンモ単独より発見率が1.5倍であった。ただ、よく見つかるというだけではだめで、これを行って死亡減少につながるのかどうかというところまでみなくてはいけない。マンモ+エコー検診の死亡率減少効果を検証する時期に来ているが、それにはあと10〜15年かかる。そのため、対策型検診(自治体が行う検診)には時期尚早である。
検診は対策型検診(住民検診型)と任意型検診(人間ドック型)に分かれているので、どの検診を受けるのか受診者が考えて受けることであろう。
 最新の乳がん治療について。T期〜W期まで全期を合わせた生存率は80.7%で、乳がんは非常に治りやすい。ただ乳がんになった患者さんの20%が10年以内に亡くなるという現実もある。なぜ手術をして、転移巣もないのに亡くなる方がいるのか。治療開始時に全身に潜在するがん細胞が存在し、これが大きくなって生命予後に関係する。ということで、手術で病巣を取っただけではなく、全身に潜在するがん細胞をコントロールするためには全身療法が必要である。乳がん治療における生命予後に関する重みは、局所療法(手術、放射線治療)より、全身療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的薬)の方が重要である。そのため、なるべく手術は小さくし、全身療法を進歩させ乳がん細胞をやっつけて生存率を高めようという形になる。そういう中で乳房温存術が出てきた。さらに「見張りリンパ節」(センチネルリンパ節)を取って調べ、がん細胞が見つからなければ、これからさきのリンパ節にはがんがないだろうと考えられるので、リンパ節をすべて取る(郭清)しなくともすむ。また、乳房全摘後の乳房再建も積極的にするという方向に変わってきた。乳房再建の方法は、自家組織による再建(再建方法自分のおなかや背中の組織を使う)ものと、インプラントによる再建(シリコン製の人工乳房を使う)があり、メリット、デメリットとして自家組織の場合、・やわらかく、温かい、・腹部や背中が痛み、傷が残る、・体への負担が大きく、社会復帰に時間がかかる、・年齢と共に変化する、インプラントは・やや硬く、冷たい感じ、・乳房以外に傷ができない、・体への負担が少なく、社会復帰が早い、・年齢と共に、片方の乳房と差が出る、などがあげられる。乳がんの手術も、個別化、最適化され、乳がんのステージ、広がり、サブタイプなどによって、乳房温存術や術前化学療法、乳房切除術±再建などを行う。そして温存手術後には放射線治療を行う。以前は乳がんのステージ(病期)で治療法を決定していたが、乳がんではがん組織の中のがん増殖に関わる以下の蛋白(•エストロゲンレセプター、•プロゲステロンレセプター、•HER2、•Ki-67(MIB 1))の量を免疫組織染色で、ルミナールA、ルミナールB、ルミナールHER2、トリプルネガティブ、HER2タイプという5タイプに分類し、それぞれ治療法が異なる。ホルモン療法は、エストロゲンの分泌と働きを抑える療法。エストロゲンによって乳がんが増殖するタイプ(乳がんの約70%)に有効で治療期間が長いのが特徴。
化学療法(抗がん剤療法)は、がん細胞に直接作用することで、細胞のDNAやタンパク質の働きを阻害して、がん細胞を死滅させる薬物療法。一定期間、1〜4週間ごとに、単体あるいは2〜3種類の薬を組み合わせて、点滴。投与前に吐き気止めの薬も投与される。抗HER2療法は、HER2タンパクを多く持っている乳がんに対して行われる。3週間に1回の点滴を、約1年間継続する。乳がん薬物療法は進歩しており、術後1〜3年の再発率が低下している。また2017年12月に使用出来るようになった薬剤として、CDK阻害薬が出てきており、ホルモンレセプター陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに適応となっている。さらに免疫チェックポイント阻害剤も乳がんに使われるということで今研究されて、近々使えるのではないかといわれている。がん細胞は免疫細胞によって排除される。ところが、がん細胞は、この免疫細胞の働きにブレーキをかける仕組みを持っていることが分かった。そこでこのブレーキを働かなくするのが、免疫チェックポイント阻害薬である。しかし、CDK阻害薬も免疫チェックポイント阻害剤も非常に高価な薬で、このままでは保険財政が破たんするだろうと言われている。緒方洪庵がベルリン大学フーフェランド教授の本を翻訳し、「扶氏医戒之略(ふしいかいのりゃく)」12ヵ条というものを書いているが、その中で「病者の費用少なからんことを思うべし。命を与うとも、その命を繋ぐの資を奪わば、また何の益かあらん。」医療費はできるだけ少なくすることに注意するべきである。たとえ命を救いえても生活費に困るようでは、患者のためにならない。ということを記している。すくなくともがん治療においては、こういうことを真剣に考えなくてはいけない時代に来ている。
 私たちの目指すがん治療とは。私たちは標準治療を行っている。標準治療とは、科学的根拠に基づいて証明された治療を行うということ。ただ、科学的根拠が絶対ではなく、そこには当然患者さんの価値観や希望、医療者の技量、医療資源というものもある。こういうものをすべて統合するが、あくまで一番基本となるのは科学的根拠である。それに対してもう一つの考え方として、患者の物語Narrative Based Medicine(物語りと対話に基づく医療療)、病気に対する、医療療に対する、病気を持って生きてゆく人生に対する、患者自身の考え、価値観がある。そこには、EBMとは違うもうひとつの真実がある。この二つを心して常に医療にあたっていかなければならないと考えている。医療の提供する側と受ける側の関係性に関する概念として、説明と同意(informed consent)を経て患者さんの価値観を強く意識し、情報に基づいて患者さん自身が選択する方法が出てきて、今は共有意思決定(shared decision making)といって、医療者と患者さんが共同して決定しましょうということに進んできている。その中で、個人的にはピンクリボン運動に関与してきた。ピンクリボンは「気づき」と「行動」の世界共通のシンボルマークで、乳房健康研究会が行うピンクリボン運動の目標は、乳がんでなくなる人を1人でも減らし、乳がんになった人にやさしい社会を作ることであり、乳房健康研究会が行うピンクリボン運動の使命は、•乳がんについての正しい知識を広める、•早期発見の啓発活動、•乳がん医療・研究の助成、•新しい医療の普及活動、•乳がん患者、家族の支援、•政策立案者・実行者への働きかけである。
今、日本中でピンクリボン活動を様々な方にしていただいている。我々も、単に告知運動をしてもあるいは本を書くだけでは我々の考えは浸透しない、検診受診率の向上はしない、ということで、ボランティアの心と正しい医学的知己を持ち、お隣の人へ働きかけてくれる人をたくさん作ったら、日本の医療も変わるのではないかと「ピンクリボンアドバイザー」を作った。
乳がんは多様性を持つ疾患で、なおかつ、5〜10年の治療の間に多様性が変化していく。こういうことを客観的に理解できて、新しいボランティア運動につなげていかれる人を作りたいという思いで頑張っている。試験を受け、初級から経験を積んで、中級、上級をとっていただくというシステムをとっている。今1万人くらいの人にアドバイザーになっていただいたが、社会を動かすのはまだまだ足りないということで、増やすということを今やっている。
本日お伝えしたことは、乳がん医療、乳がんの考え方の変化、検診、診断、治療などの進歩により万人向け医療から個別化医療、最適医療へ向かっている、こういう中でエビデンスに基づいた治療、患者さんの物語に基づいた医療、そういう医療を患者さんとともに同じ目線で、意思決定を共有しながら進んで行っているとご理解いただければ、本日のお話したことがお伝えできたと思う。ご静聴ありがとうございました。
【質疑応答】
Q1:乳がん検診で、マンモグラフィと超音波で発見すると聞いたが、MRIというのは乳がんと診断されてからするのか、マンモグラフィと超音波とMRIの関係や重要性についてお聞きしたい。

A1:MRIは診断がついて、患者さんにどんな治療を行うかというときに通常用いる。MRIは一番精度が高い乳がんの画像診断法と言われている。ただ、高い検査なので、通常検診では行わないが、乳がんのなかで、5〜10%が遺伝性乳がん・卵巣がん症候群と言われていて、こういうリスクの高い人はMRIが一番いいと考えられている。遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の人は遺伝子の変化を治す力が弱く、マンモグラフィは放射線なので、もしかしたら遺伝子変化が起こるかもしれないので、そういう人には少し高いがMRIを使うというように使い分けをしている。

Q2:病院で自己受診しMRIを受けた場合、MRIとマンモグラフィ、エコーの診断はどちらが重要な診断になるのか。

A2:なかなか難しい質問だが、通常検診でも診断でも、マンモグラフィと超音波を基本でやっている。病院にいらしたときはマンモグラフィと超音波を行い、気になる時はMRIを行うが、当然そこに差が出てくる。どちらを信用するかはとても悩むが、MRIは感度が高いのでいろいろなものが見つかってくる可能性が高い。そこで、気になるところをもう一度超音波を行い、それでも気になるところがないという場合は、MRIは少し陽性だが少し様子をみようということだったり、逆にマンモグラフィや超音波で問題のないところにMRIが問題を指摘して、実はこういうところにしこりっぽいものがあるというのが分かることもある。そういうわけで、我々はいつくかの画像診断を統合してやっている。

Q3:良性の疾患があるとがんになりやすいのか、また放射線を胸にあてているとリスクはあるのか。

A3:きわめて目立つ乳腺症がある場合はリスクが高いことが分かっている。小さい頃たくさんレントゲンを撮ったとか、放射線治療を行った人はリスクが高い。放射線は遺伝子にダメージを起こすので、ダメージを起こした細胞が異常な動きをし、がんに変わっていくという可能性はある。
20代、30代の頃は乳腺が活発な時期なので、そこに被曝すると遺伝子変化を起こしやすいので、あまりマンモグラフィはやって欲しくない。40代以降はマンモグラフィによる被ばくによってがんになるリスクは少しあるが、マンモグラフィによる被ばくと、マンモグラフィ検診を受けたことによる救命効果を比較すると、圧倒的に命を救う効果が大きくなる。

Q4:先生方はいろいろな例告知の場面をみておられると思うが、治療の決断をするまでをフォローする臨床心理士やカウンセラーのような専門職の方々の育成はどうなっているのか。

A4:臨床心理士は非常に重要であるが、臨床の場ではふんだんにいるわけではないし、雇い入れている組織もなかなかない現状である。私たちは必要なら臨床心理士に介入いただいている。ただ、医師並びに看護師、特に看護師が重要である。いかに看護師と信頼関係を確立していくかということだと思う。先ほどお話した、共有意思決定(shared decision making)が目標と言ったのはそういうことで、同じ目線で、情報を聞いてやり取りして、お互いに物語があるわけだから、それで意思決定をするのが一番重要である。それが一番時間がかかる。また何人かの看護師が主治医のように話をお聞きする体制を作らないと無理である。また、妊孕性の問題では臨床心理士を交えて行ったりするが、ただ、日本の状況は厳しく、多くの人をカバーすることは難しい。

Q5:2人乳がんの手術をした人がいて、1人は乳房全摘をしたあと薬も放射線も行っていない。もう1人の人はステージ1で部分切除だが放射線治療を行っている。その違いは何か。

A5:全摘というのは、がんが乳房のかなりのところに進展しているから摘出するが、乳房のなかのかなりの部分に広がっているというのは、決して進行したがんばかりではない。非浸潤がんで超早期のがんでも乳房全体に広がっていることもある。その場合全摘となる。ただ、超早期の場合転移している可能性は低いので薬は使わなくてもいい。がんの広がりや性格で大きく取る、小さく取るということをしているので、小さくても性格が悪いのは抗がん剤をがっちりやらなくてはならないということもある。単に大きさだけではなくがんの性格によって治療が変わってくる。
講演の様子
相模原市医師会長 竹村克二氏

開会あいさつ:相模原市医師会長竹村克二氏拡大表示

講師:福田 護 氏

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会場の様子

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